『コラム』
- 野村整形外科(PT 高橋孝輔)
- 2021/07/16
投球・打撃パフォーマンスUP・肩肘ケガ予防には体幹を捻れ!
野球の「投げる」「打つ」動作はその習得が非常に難しく、野球少年の肩肘のケガの多さは社会問題化しています。
近年は正しい動作の習得のために「○○理論」のような色々な指導メソッドがありますが、その多くは腕の使い方であるとか、また感覚的な話が多く選手自身も理解が難しいのではないかと感じます。
整形外科での勤務と、野球部での指導で培ってきた経験と知識をもとに投球・打撃時に大切な「体幹」の動きについての説明と、そのトレーニング方法をご紹介いたします。
投球時の腕は「振る」ではなく「振られる」もの
野球経験者であれば一度は言われたであろう「しっかり腕を振れ」。
ですが、腕は振られるものです。
でんでん太鼓をイメージするとわかりやすいですね。この太鼓の部分、人間でいう「体幹」が回転することでそれに引っ張られて腕が振られるのが理想だと考えます。
投球動作では下半身の力をボールに伝えていくのですが、それには「並進運動(横向きに投球方向へ真っすぐステップすること)」と「回転運動(ステップの後の体幹の回転)」の2つの運動が必要です。
これは打撃動作においても同様で、パフォーマンスUPにはとても重要な要素です。
今回はまず「回転運動」について解説し、トレーニングを紹介します。
投球における回転運動はステップ脚が着地(右投げであれば左足)した直後に着地した足には逆向きの力が働き、股関節が支点となって骨盤から上半身には前方に進もうとする力と鋭い回転の力が発生します(図1参照)。
その骨盤を含む体幹の動きによって腕が振られてボールが投げられるのです。
ではより速いボールを投げるためにはどうすればいいのか。
それには「より大きく・速く」回転させる必要があります。
つまり、骨盤が先行して回転し、上半身が遅れて回転すればより大きなエネルギーをボールに伝えることができます。
これがいわゆる投球・打撃動作によく使われる「割れ」のことであり、この「割れ」を大きくするためには肩甲骨を含めた体幹の捻りを大きくすることが必要なのです。
この捻りをつくるために必要な身体の機能で大切になってくるのが肩甲骨と胸郭の柔軟性です。
肩甲骨は色々な方向に動きますが、ここで特に重要な動きは「前傾・外転(前にすぼめる動き)」と「後傾・内転(背中側に引き寄せる動き)」です(図2)。
胸郭は背骨や肩甲骨の動きに連動して動きます。
投球動作時の肩甲骨は投球側・非投球側が交互に動くことで胸郭の回転が起こり、割れを作っています。(図3)
肩甲骨・胸郭の動きが理解できたら、このお話のテーマである「捻れ」をつくるために私が実際に用いているトレーニングをご紹介致します。
肩甲骨&胸郭の柔軟性UPトレーニング
いかがでしたか?初めは結構キツイかもしれません。ですが毎日コツコツと継続して取り組むことで身体は変化し、「成長」につながります。頑張ってください!
参考文献:猪膝武之 著:野球新理論捻りモデル 長打・強打を打つ方法 東邦出版 2015
Oyama S, et al:Improper trunk rotation sequence is associated with increased maxmal shoulder external rotation angle and shoulder joint force in high school baseball pitchers. Am J Sports Med.2014.