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『コラム』

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ラグスタ株式会社
2021/08/21

(後編)元女子プロ野球選手 佐藤千尋さん【Cittaインタビュー】

前回のvol.1に引き続き、元女子プロ野球選手で現在駒澤大学附属苫小牧高等学校女子硬式野球部の部長をされている佐藤千尋さんにインタビューを行いました。vol.2では指導者としてのお話を伺います。

セカンドキャリアに悩んだ現役引退後

――前回のvol.1では現役時代の生活や練習、トレーニング等についてお話を伺いましたが、現役引退後はなぜ指導者の道を選ばれたのですか?

【佐藤千尋さん(以下敬称略)】 プロとして8年目のシーズンが終わり、私自身は現役続行の意思があったのですが会社から来期の契約は結ばないというお話がありました。

セカンドキャリアについて考え始めた頃に、本校の校長から女子野球部の立ち上げを行うとお話をいただいて。保健体育の教員枠もちょうど空くということでしたが、正直なことをいうと大学の頃よりも教員への熱が下がってしまっていたこともあり、最初は本当に迷いました。

今までと全く違う生活をすることに対して、飛び込む勇気が出なかったんです。ですが、8年間現役として活動をしてきたこと、女子野球部を立ち上げる学校から声を掛けていただけたということは何かのご縁だと思いましたし、今まで学んできたことは女子野球界に還元しなくてはと思い、最終的には本校での教員・女子野球部の部長としての道を選択しました。

当時、女子野球部監督である茶木監督のところへご挨拶に伺った際、『やる気と情熱だけ持ってきてくれたら他は何もいらない』という熱いお言葉をいただいて。

子どもたちのために何かしてあげたいという気持ちと、自分自身も成長ができるのではと思って飛び込みました。

元女子プロ野球選手 佐藤千尋さんインタビュー
 

競技者から指導者へ、模索しながらの日々

――指導をする立場として、大切にしている事やモットーなどはありますか?

【佐藤】 正直今まで指導者になりたいと思ったことがなかったので、私で良いのかな…と思ったりしながら模索中という感じで。

ただ、私の役割としては監督と選手を繋ぐというところだと思っていて、茶木監督と同じ熱量で生徒に接しながら何事も熱く伝え続けるところかなと思っています。

茶木監督は凄く周りが見えていて色々なことを感じ取る方なので、私はそのこぼれたところに目が行き届いたらなという気持ちでいます。

生徒にとっては先生でもあり、指導者でもあり、少し年の離れたお姉ちゃんというような存在でありたいと思いますし、何かに迷ったり悩みを抱えた時に話せるような関係性を築けたらいいなと思っています。

 

指導者として、日本一の景色を

――お話しを伺っただけでも、佐藤さんは生徒たちにとって重要な存在だと感じましたが、今後指導者として活動していく上でどのように成長していきたいか、また、何か目標はありますか?

【佐藤】 指導者として、日本一の景色を見てみたいです。

現役時代に何度かタイトルを獲ったこともありますが、少ないチーム数でのタイトルだったので…指導者としての日本一はどういった景色なのかを見たいと思っています。

また、男子野球部は高校野球界でも名門中の名門です。そこで日本一を獲った監督の下で同じ指導者という立場で関わることができるということは、自分自身に足りないものや感じたことのない思い、持っていない知識等をどんどん吸収できるという思いもあります。

それが成長へ繋がると思いますし、私も生徒と一緒に試行錯誤しながら成長していき、一緒に新しい景色を見たいなと思っています。

――日本一という大きな目標に向かって日々取り組まれている佐藤さんですが、ここで現在の1日のスケジュールを拝見したいと思います!

元女子プロ野球選手 佐藤千尋さんインタビュー
 

【佐藤】 起床時間は大体5時半から6時くらいで、朝食をとって準備をしたら7時半から8時くらいまでには出勤しています。

そこから授業と部活をしてという形ですね。平日は19時に完全下校となるので、大体その時間まではグラウンドにいます。

あとは帰宅してお風呂に入ったり自分の時間を過ごしたり…野球の日記を書いたりもします。最近寝るのが凄く早くて22時には寝ています(笑)帰ったらご飯を食べて寝るだけの生活になりつつありますが…睡眠時間はばっちりです(笑)

最初の頃は教員という仕事に慣れることに必死でしたが、慣れてきたら今度は生身の人間と接しているという実感がどんどん湧いてきて。

色々なことに気を遣うというと変な感じもしますが、何事もより深く考えるようになりました。生徒のことや自分自身のことも含め、もっとこうしようというと考えることがたくさんあるので…帰ったらヘトヘトになっていますね(笑)

自分自身がどこまで入って良いのか悩むことや、教師と生徒の距離感を保ちつつ、もう少し寄り添いたいなと思うところもあって…日々葛藤している部分もありますね。

そこはこれからも色々な生徒と接していく中で慣れていけたら良いのかなと思っています。

 

日本一という目標へ向けて、最高で最強のチームへ

――毎日色々なことを感じながら活動されている佐藤さんから見て、駒澤大学附属苫小牧高等学校の女子野球部はどのようなチームですか?また、スローガンがあれば教えてください!

【佐藤】 創部は2020年4月で、『最高で最強のチームへ』というスローガンを掲げて活動をしています。

日本一が目標ではありますが、仮に日本一になって『最強のチーム』になれたとしても『最高のチーム』というのは勝つだけではなく、チーム内の繋がりや人間性といってところも備わっていないと成し遂げられない目標だと思っています。

ただ野球だけができれば良いということではなくて、人間性も磨きながら全員で活動していこうという思いでこのスローガンを掲げています。

――駒澤大学附属苫小牧高等学校というと野球の名門校ですが、男子野球と女子野球での違い等あれば教えてください!

【佐藤】 ルールの中で大きく違うことはイニングです。女子は7イニング制でバットは金属バットの中でも少し軽いものを使用しています。あとは特に男子と変わらない規格で行っています。球場のサイズ等も一緒です。

――佐藤さんが大学生の頃に男子と一緒にプレーしていた際は、同じく木製バットを使用されていたかと思うのですが、そこに対する難しさ等感じたことはありますか?

【佐藤】 高校まで続けてきたソフトボールから野球に転向した時に、塁間の距離の違いや牽制の有無に慣れるまでが大変でした。

ソフトボールはピッチャーが離すと同時にリードするので牽制がないんです。しかし野球ではリードして戻ったりということがあり、最初は理解できなくて…そこが苦労しましたね。

木製のバットを使用することについては、そこまで大変ではなかったような気がします。オーダーをして軽めの木製バットを作ってもらったりしていたので…

男子が使っているようなバットを力強く振ったりはできなかったし、ピッチャーの投げるボールも速くてなかなか前に飛ばすことができなかったりもしましたが、そこを苦に思ったことは一度もありませんでした。どちらかというと早く慣れようという気持ちが強かったように感じます。

 

北海道から女子野球を盛り上げたい、決意の創部

――現在、北海道内には駒澤大学附属苫小牧高等学校女子野球部を含め2校しか女子野球部がありませんが、なぜまた野球の名門校である同校で女子野球部の創部に至ったのでしょうか?

【佐藤】 女子野球部を増やしていこうという動きは全国的にあるというのが現状です。本校の場合は校長が野球でのご縁が多く、当時北海道に1校しか女子野球部がないということで北海道、そして東北からも盛り上げていきたいということで設立に至りました。

もちろん男子野球部のネームバリューもありますし、女子野球部設立のために動ける環境を整えていただき、現在まで活動を続けることができています。設立当初は賛成意見も多くなかったと聞きましたが、現在は周りの方々にも支えていただきながら活動ができているというところです。

ーー女子野球部に在籍している選手の出身中学校を見ると道外の選手が多い印象を受けますが、その点についてはどうでしょうか?

【佐藤】 1期生は6,7名くらい、2期生については18名中約半分が道外から来ています。

一番遠いところから来ている選手だと関西で、関東や東北からも来ています。1期生は特に、自分たちが創部する・歴史を作るという気持ちの選手が多かった印象です。

また、道内でも当時は札幌に1校しか女子野球部がなかったので、もう少し近い距離にあったら…という思いを抱えていた選手たちが入部してくれました。

あとは男子野球部のネームバリューもありますし、駒澤大学附属苫小牧高等学校のユニフォームを着たいという気持ちも少なからずあるのではないかなと思います。茶木監督の頑張りがあったおかげで、結果として設立して良かったと思っています。

元女子プロ野球選手 佐藤千尋さんインタビュー
 

一つの目標に向かって、全員が高みを目指す意識

ーーチーム、選手の特徴などはありますか?

【佐藤】 全体的に明るい印象がありますね。あとは色々な意味でみんな素直です。

学びたいという気持ちが全面に出ている感じというか…元気で、パワフルで、高みを目指す気持ちが全員にあると感じています。

練習中はお互いに厳しいことを言い合ったりぶつかったりもしていますが、グラウンドを離れると普通の女子高生なんです。そういったメリハリがあるチームだと思っています。

ーー高みを目指すチームならではの特徴ですね!練習は毎日行っているのですか?

【佐藤】 基本的に火曜日はメディカルデーとして選手全員を整骨院に通わせています。怪我や痛みがない選手でも少し気になっているところや身体のケアとしてそのような日を設けています。あとは平日だと19時まで、土日だと終日(朝から夕方頃まで)練習をしています。

また、土日は全体練習を15時半くらいまでに切り上げて自主練習の時間を設けています。

自分で考えて課題を見つけるということも上達のためには大切になってくるので、自主練習は基本的に見守っています。選手からノックを打ってほしいと声を掛けられたり、プレーに関する質問をされた時にはもちろん応じていますが、ベースは生徒に任せているスタイルです。

――自分を客観的に見て課題を克服することも大切ですね!また、高校生というと何かと難しい時期かと思いますが、気持ちの浮き沈みやメンタル面等、佐藤さんはどのように選手と接していますか?

【佐藤】 現在は1期生に2期生が加わったことで色々と変化のある時期です。選手たちも個人個人で思うことや悩みがあるかと思いますが、結果として気持ちの浮き沈みに繋がってしまうこともあって…みんなが葛藤している最中だと思っています。

踏み込みすぎも良くないし、かといって突き放しすぎても逆効果だと思っていて…そのメリハリが必要だと感じています。

ですが、これは誰にでもある課題だと思いますし、チームスポーツである以上個人の葛藤や気持ちの浮き沈みを練習やプレーに持ち込むことは違うと思っています。

私も練習中は厳しいことをたくさん言いますし、選手には心を鬼にして接しています。ただ、その後のフォローも忘れずに話を聞いたり励ましたり…現時点ではこれが正しいのかどうかまだわからないけれど、私自身も毎日模索しながらこれからも接していきたいと思っています。

 

勇気を持って踏み出す、何事もそこから始まる

――佐藤さんの選手に対する考えや思いが伝わってきました…!では最後に、これから女子野球を始めたい方、また女子プロ野球を目指したいという方たちにメッセージをお願いします!

【佐藤】 女子野球界がこれからどんどん発展してほしいという気持ちと同時に、私自身も発展させたいという気持ちがあります。

女子野球に少しでも興味のある方は、勇気を持って踏み出していただければと思います!

現在は高校・大学もそうですが、企業として女子野球チームがあるところやクラブチームもどんどん増えています。アマチュアからでもJAPANのチームに選出される機会もありますし、明るい未来が待っている世界だと思うので、少しでも興味がある方や野球をしてみたい、野球が好きだという気持ちがある方はそれを大事にして、男子にも負けずに続けてもらえたらと思っています!

その先に、何か自分のためになることは必ずあると思うので、一歩踏み込んでいただいて一緒に頑張っていきましょう!

佐藤千尋さんにvol.1,vol.2を通して野球に対する熱いお話を伺うことができました!Cittaでは今後も駒澤大学附属苫小牧高等学校女子野球部の皆さんを応援すると供に、野球に関するトレーニングやケア等のコンテンツも更新していきます。皆さんもぜひご覧ください!

佐藤千尋

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元女子プロ野球選手 佐藤千尋さん

佐藤千尋

岩手県出身。北海道苫小牧在住。元女子プロ野球選手(2012―2019)
現在、2020年に新設された駒澤大学附属苫小牧高校女子硬式野球部部長として後進の育成、女子野球の発展と普及に尽力している。


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