『コラム』
- Citta
- 2022/07/16
Jリーグでは今こんなことが起きている!~むってぃーのつぶやきシリーズVo.1~
J2いわてグルージャ盛岡キャプテン、牟田雄祐選手こと、むってぃーのつぶやきシリーズ。
牟田選手がJリーガーとして直面しているサッカー界の変化をお話しいただきました。
コロナ禍がもたらしたJリーグへの影響とは
Jリーグ始まって3節くらいになるんですが、J1の2節くらいが終わった時点で、レッドカードで退場してる選手が多いの知ってますか??と牟田選手。
そう話してくださったのは、3月初旬頃の事である。
お話しを詳しく聞いていくと、なんと今年、退場の比率が前年に比べ大幅に増えたそう。
2021年2節終了時(約20試合)は2名だったところが、2022年2節終了時(19試合)でなんと9名に増えているとのこと。
およそ2試合に1回のペースでレッドカード退場が発生している、これは驚きの事態だ。
ネットニュースでもその非常事態を各所が取り上げていた。
⇒yahoo!ニュース参考記事
【牟田雄祐さん(以下敬称略)】ネットニュースでも多く取り上げられてはいるのですが、その原因については触れられているものはなく、僕なりになぜ多いのか?を考察してみました。
この2年、新型コロナウイルスの感染拡大が広がって、ソーシャルディスタンスが喚起され、人と距離を取る事や、黙食や黙浴といった、人と触れ合う事が制限された時間が多くなったことが、一つ関係していると思っているんです。
前に本(※1)で目にしたことがあるのですが、人は人と触れ合うことで相手との距離を測ったり、空間の中に相手がどこにいて、自分がどこにいるのかを測っているみたいで、幼児期にハグが少ないと非行に走ってしまう、という研究もあるみたいです。
相手との距離を測れる事は大事だと思っていて、サッカーに置き換えた時に、人とコミュニケーションを取ったり、触れ合うことを制限されて、おそらく自分がどこにいて、相手がどこで、ボールがどこにあるかという距離感が少しズレてしまっていると思うんです。
なので、ボールにアプローチしても少しズレてしまって相手に当たってしまったり、私も開幕戦で体感したのですが、正当にボールにプレーをしたつもりが、映像を見返すと全然ボールに触っていなくて相手に当たってしまってファールをしたという事もありました。
絶対ボールにいったのにと思ったのにズレていましたね。笑
今回のレッドカードで退場が多い原因も、ソーシャルディスタンスとか人と距離を取る事で、従来の感覚とズレが生じていることにあると思うんです。
ーーへぇ〜!なるほど!!それは有り得ますね!
【牟田】そうですよね!
他の退場した選手のプレーを観ていても、みんなボールにいってるよ、ファールじゃないよ と審判にアピールしているのですが、全然ボールにいってなかったりするんですよ。
それを観ていて、自分が思っている相手との距離や足を出した時の距離感とかが、おそらくちょっとずつズレてるんですよね。
これ、結構核心ついてると思います!
ーーこれはプレーヤーでないと分からない事ですよね!
【牟田】私もそのプレーしていて、いつもなら怪我しないのに少し怪我してしまって、なんでかなと。
私たちもキャンプをずっとしていて部屋からあまり出れないし、家族がいて手を繋ぐとかハグするとかないので、それが原因かなとふと思ったんです。
私はサッカーで捉えて考えましたが、多くのスポーツにも当てはまるのではないかな~と思うので、これを機に発信をしたいなと!
ーーなるほど!
私も先日J1の試合を観に行きましたが、レッドカードまではいかずとも、両チーム反則が多くイエローカードが出ていましたね。今の牟田さんのお話を聞いて、それか!って思います。笑
【牟田】今年特に多いんですよ。
ーーコロナ禍でやっと試合が出来た事で、やってやろう!という気持ちが出てという事は考えられますか?
【牟田】やってやろうの気持ちが強くても、さすがにここまでのファール数はないですね。笑
今年Jリーグは、キャンプ中に結構コロナ感染者が出ていて、対人練習が制限され、距離を取った練習になったチームも多かったですし、ホテルも2人部屋はもちろんないですし。
子どもに置き換えても、そういったことから思いやりとかを学ぶみたいです。
物理的な距離でだけではなく、言葉のやり取りから学ぶ事も多いみたいで、大人も同じようにそういった事がなくなると判断力などが下がってしまうのかなと思いましたね。
ーーこの考察なるほどな!と思います。なかなかそこまで考えている方はいないんではないですか?
【牟田】そうですね、ここまでこの問題に対して考えている方はいないかもしれないですね。
今回はJリーグで実際に起きていることに対しての考察ですが、スポーツや子どもの教育をされている方々にも繋がる事なので、是非届いて欲しいですね!
(※1)参考本:⇒ケーキを切れない非行少年たち
教育についての参考サイトはコチラ↓
⇒子どもたちとの接し方コラム
⇒子どもたちのパーソナルスペースについてのコラム
【牟田】子どもを対象にした実験例としてトレーナーに聞いた話です。
子ども複数名を育てる中で、衣食住はしっかり与え、全く人と触れない状況で生きられるか?という実験をした例があり、全員亡くなってしまうんです。
人と触れ合わないと亡くなってしまう事が明らかになった実験です。
チーム内でコロナ感染者が出て、隔離生活になり、練習や試合も出来ない状況になった時もあって、やはり、隔離されればされる程感覚のズレが大きくなっているのを感じましたね。
ーー隔離期間の過ごし方は、選手の方それぞれだと思いますが、感覚を少しでも落とさない様にどんなことをされているんでしょうか。
【牟田】チームメイトで1人、コロナウイルスに感染して隔離をされていましたが、復帰後めちゃくちゃ調子良かった選手もいます。
その選手はサッカーが出来ない期間に、サッカーがやっぱり好きなんだと気付いたとの事も言ってました。
出来ている事が当たり前ではないんだと、もっと頑張ろうと奮起するきっかけにもなっていた様です。
隔離期間でどう過ごすのかって、凄く重要だと思います。
感覚を戻しやすくする為に今思うのは、カラダのあちこちがいろんな所に触れる、前転はすごくいいなと思います。
あと、寝る前自分にハグしてます!自己肯定感を上げる事にも繋がりますからね。
チームのみんなどう考えているだろう…。
私も知りたいですね。
ということで、牟田選手の所属する、いわてグルージャ盛岡の選手14名にアンケートを取らせていただきました。14名はいずれも、1週間~3日間の隔離を経験した選手です。
現役選手はコロナ禍での隔離生活などをどう感じているのでしょうか。
アンケート内容は以下の内容を伺った。
- コロナ禍において練習環境が変化し、コロナ前よりコンディションやパフォーマンスに影響があると感じるか?
(良い影響がある、悪い影響がある、変わらないの3項目それぞれで理由も合わせて伺った) - 実践で感覚のズレを感じた経験はあるか?
- 隔離期間中、コンディション維持のために工夫をしていた事はあるか?
2、3の質問に対しては、あると答えた方へ、その内容も伺っている。
コロナ禍において練習環境が変化し、コロナ前よりコンディションやパフォーマンスに影響があると感じるか?
悪い影響があると回答した選手が11名。
代表的な理由を紹介しよう。
- チームの1週間の流れがある中で、練習制限される場合はコンディションがどうしても落ちてしまうと感じた
- 練習場所、練習時間、練習方法の制限などでプレーの感覚が鈍ることがあった
- サッカー以外の私生活で、ストレスがかかる場面が増えて、満足に休養をとれないこと
上記の様に、コロナ蔓延や、隔離期間があった事で従来通りの練習や生活ができていなかったことで、パフォーマンス維持に苦労された選手が多かった様だ。
また、競技外でも行動制限や気を遣う場面が増えた事により、ストレスを感じている選手が多い傾向が分かった。
実践で感覚のズレを感じた経験はあるか?
「ない」と回答した選手が多い結果だが、「ある」と回答した選手からはこんなエピソードが上がっている。
- 休み期間でコンディションが落ち、ボールタッチの感覚が少し変わっていたり、届くと思ったボールに届かなかったりということがあった
- ボールへの到達時間が想定より遅れて高い位置でボールを触われなかった
- 背後に出たボールの処理はしたが止まることができなくて味方と交錯した
この意見から、牟田選手が指摘していた事を実際に感じている選手が少なからずいることが分かった。
では、コンディションを維持する為にどんなことを選手の皆さんは隔離期間中に実践されていたのだろうか。
隔離期間中、コンディション維持のために工夫をしていた事はあるか?
「ある」と答えた選手は10名。
やはりトップ選手であることが前提にあるので、多くの選手が工夫をされ行動を起こしていたことが分かった。
多かった答えとしては、やはり身体面の維持をはかる、室内でのトレーニングや心肺機能を低下させないための有酸素運動を実践されている選手が多かった。
1つ目の質問で、環境の変化がコンディションに悪い影響があると感じていた選手の中では、特に工夫はされていないと回答している選手もいた。
上記から考えられる事は、日頃から自宅や部屋でのトレーニングの習慣があり、新たに始めた点で考えると「ない」の回答になったのかもしれない。
このアンケート結果から、隔離生活や、練習制限、行動制限といった環境の変化がもたらしている選手への影響は大きなものがありそうだ。
また、そういった中で精神的なストレス増加にも繋がっていることが回答からもみえてきた。
ストレスは様々な視点で大きな変化を及ぼしているのではないか?
次回のコラムでは、このアンケート結果をもとに、更に深くこの考察を牟田選手と一緒に考えていこう。
隔離期間中の実際にどのように過ごしているのか?
隔離期間、練習、試合。シーズンを通して起きる変化にどう向き合っているのだろうか。
牟田選手のリアルを語ってもらおう。
次回もお楽しみに。
PROFILE
いわてグルージャ盛岡キャプテン 牟田雄祐
サッカーJ2リーグ所属 いわてグルージャ盛岡キャプテン
KSNサポートアスリート
小学生からサッカーを始め、大学卒業後2013年からJリーグ、名古屋グランパスに入団。2年間の経験後、京都サンガF.C.に入団し、所属中に期限付き移籍でFC今治でもシーズン通して活躍。2020年から現在所属のいわてグルージャ盛岡へ移籍。
昨シーズンはキャプテンとして、チームのJ2昇格に大きく貢献した。
選手活動に加え、Game Changer Pass-A-Ball Projectの活動もおこない、子どもたちの支援活動を精力的に行う。
⇒Game Changer Pass-A-Ball Project