『コラム』
- 有限会社ゴルフハウス湘南
- 2023/01/23
ゴルフスイングにおける「重心」と正しい体重移動
先日、あるフラダンスの先生とお話しをさせていただく機会がありました。
その方はプロのダンサーで、メディアにも多く出演されている方です。
ゴルフとフラダンスは共通点が多く、特に「体幹」はゴルフ、フラ共に重要です。
そんな話で盛り上がったのですが、彼女は「フラでは体重移動と重心移動は違うんです」といいだしました。
「体重移動と重心移動は、概念は非常に似ていますが全然違うモノなんです。しかし、その違いを認識している人はとても少なく、フラを教えている人でさえ知らない人が多いのが現状です」。
彼女は更に続けます。
「この違いを知らないと、ダンスは極められません」と・・
私はその話を聞いて驚きました。
なぜなら、ゴルフもまったく同じだからです。
今回のゴルフコラムは、ゴルフスイングにおける重心と体重移動について考えてみたいと思います。
ゴルフスイングの4つの要点
ゴルフスイングにおける重心と体重移動を正しく理解する上で、ゴルフスイングの要点を知っておく必要があります。
それは、私がお客様のスイングをチェックする際に必ず見る次の4つです。
- スタビリティ(Stability)/安定性=安定させるべきところを安定させること
- モビリティ(Mobility)/可動性=大きく動かすべきところを動かすこと
- キネティックチェーン(Kinetic chain)/運動連鎖=効率よくパワーを生み出すこと
- パワーポイント(Power point)/力の作用点=生み出されたパワーを正しくボールに伝達すること
これらはどれも大切で、どれが欠けても思い通りにボールを飛ばすことはできません。
トップやダフリといったミスショットの原因のほとんどは、①安定すべきところが安定していない、もしくは②動くべきところの動きが十分でない、のいずれかです。
そして飛ばない、曲がるといった不具合の原因は、③ボールを飛ばすためのパワーが十分生み出されていない、更には④そのパワーが正しくボールに伝達されていないか、といったことなのです。
少し詳しく説明しますと、「スタビリティ」(安定性)が求められる部位は、体幹部、大腿部(太もも)、ヒザ関節、そして足の裏です。
また「モビリティ」(可動性)が求められる部位は、肩甲骨、肩関節、股関節、そして意外にも足関節(足首)です。
足首の柔軟性は軽視されがちですが、ゴルフではとても重要です。
その理由は長くなるので別の機会に譲ります。
「キネティックチェーン」(運動連鎖)は、“身体の中心部”で発生した運動が、末端へと伝わりながら増幅、末端に大きな運動が得られるという原理です。
身体部分を連続した鎖に例えてキネティックチェーン(運動連鎖)といいます。
ゴルフに限らず、野球やサッカー、バレーボールなどの球技、そして格闘技など、大きなパワーを出力する競技には必要不可欠な要素です。
このパワーの発生源である“身体の中心部”が、今回のテーマ「重心」です。
最後の「パワーポイント」(力の作用点)は、アドレス時のボールポジションです。
ボールポジションがズレていると、クラブヘッドに生じた運動エネルギーをボールに正しく伝達することができず、飛距離不足や曲がるといった結果が生じます。
これについても詳しくは別に機会に譲ります。
重心(センター・オブ・グラビティ)とは?
ゴルフスイングは円運動です。
クラブに円運動をさせ、クラブヘッドの重さによる遠心力を利用することで、安定した軌道を描かせることができます。
クラブに安定した円運動をさせるために必要なことは、軸をしっかり安定させることです。
回転するモノの中心がフラフラしていては、回転がままならないのは容易に想像できるでしょう。
そして、軸を安定させるために重要な概念が、「コア」の存在です。
コアとは、重心(センター・オブ・グラビティ)のことです。
東洋的には「丹田(たんでん)」と呼ばれ、「ヘソ下3寸」といい、おヘソから3寸(約9㎝)下にあります。
このコアを安定させることが、軸の安定、更にはスイングの安定につながります。
ゴルフスイングでは、このコアがとても重要なのです。
キネティックチェーンの説明で述べた“身体の中心”が、正に「コア(重心)」とイコールなのです。
ヒモの片方の端に小さなおもりを付け、反対側の端っこを手で持ってグルグル振りまわす動作を想像してください。
手元の小さな回転によって、おもりが付いた側の大きな回転運動を生みだしています。
このとき、手元は小さな回転運動をしているものの、その位置はほぼ一定です。ここがポイントです。
この動きは、ゴルフスイングの動きと同じです。
先に付けたおもりがクラブヘッド、ヒモが腕とクラブシャフト、そして手元がコア(重心)に当たります。
コアは具体的には、骨盤の中心部にある骨、仙骨だと思ってください。
このとき、ヒモ自体は何もしていません。
おもりと手元をつないでいるだけです。
そして回転運動の中心である手元(コア)は安定しています。
仮に手元(コア)がフラフラ動いてしまうと、先端は安定した回転は得られず、スピードも出ません。
この原理はゴルフスイングもまったく同じです。
腕自体は何もせず、仙骨にあるコアの小さな安定した回転によって、クラブヘッドに大きな回転運動を生みだしているのです。
正しい体重移動を習得するには
ゴルフスイングは、コア(重心)を安定させ、骨盤を骨盤の中心部にある仙骨を中心に回旋させ、それが腕やクラブの大きな回転運動を連鎖的に生み出す運動です。
これがゴルフスイングの本質です。
コアを安定させて骨盤を回旋させる際、右に回旋させると右脚に体重の多くがかかります。
そして左に回旋させると、左脚にほとんどの体重が乗ってきます。
これがゴルフスイングにおける体重移動です。
よって正しく体重移動をさせるには、コア(重心)の安定が不可欠なのです。
重心を安定させ、正しく体重移動をするには、スタビリティとモビリティが求められます。
具体的には、体幹を構成する筋肉、腹横筋や腸腰筋、多裂筋といった“コアマッスル”を鍛えたり、股関節の正しい使い方を学んだり、必要な筋肉の柔軟性を高めたりすることが大切です。
それらを疎かにし、右から左に体重を移動させることばかりを意識すると、コア(重心)そのものが左右にフラついていてしまうことが懸念され、安定したスイングはままなりません。これでは本末転倒です。
逆にいうと、スタビリティとモビリティを両立させるカラダを獲得し、関節の使い方を正しく学べば、体重移動など意識せずともコアが安定し、正しい体重移動が自然に得られ、上達も早まるわけです。
巷に溢れているレッスン書や雑誌のレッスン記事、もしくはYouTubeにアップされているレッスン動画の中には、体重移動を意識的にさせようとする記述がとても多いです。
もしくはそのような意図はなくても、それを読んだり見たりした人の中には、体重移動を意識するあまり、コアが不安定になり、スイングを崩してしまう人も少なくないのではないでしょうか。
そして時に、無理なスイングを強いて、怪我や故障をする人もいるのではないかと心配です。
ゴルフスイングで大切なのは、先述の4つの要点と、クラブの遠心力を利用したスムーズな円運動です。
「重心と体重移動との関係」を正しく理解し、上達のための無駄足を踏まないで欲しいと思います。
次回もお楽しみに。