『コラム』
- 有限会社ゴルフハウス湘南
- 2024/03/18
肩甲骨の柔軟性を高め、ゴルフの上達と健康増進を!
ゴルフの上達をフィジカル(体)から考えるシリーズの第3弾。
前々回は股関節について、前回はCittaからの質問企画で体幹についてお話ししました。
今回は“ケンコウコツ”についてお伝えします。
ケンコウコツは、漢字で書くと肩甲骨ですが、「健康骨」といわれるぐらい健康と密接な関係があります。
また肩甲骨の柔軟性が欠如していると、ゴルフの上達にも多大な影響を及ぼすので注意が必要です。
肩甲骨の柔軟性を高めるエクササイズもお伝えしますので、是非最後までお読みください。
肩甲骨の柔軟性欠如で生じるゴルフのミス
何度も登場しているワード「ゴルフスイングの4つの要点」をおさらいしましょう。
「4つの要点」とは、①安定性(スタビリティ)と②可動性(モビリティ)、③運動連鎖(キネティックチェーン)、そして④力の作用点(パワーポイント)の4つです。
①の安定性が求められる部位は、体幹部、大腿部(太もも)、膝関節、足裏。②の可動性が求められる部位は、頚椎、肩甲骨、肩関節、股関節、足関節(足首)です。
身体の部位を上から順番に見てみると、頚椎~肩甲骨(可動性)、体幹(安定性)、股関節(可動性)、大腿部(安定性)、足関節(可動性)、最後に足裏(安定性)です。
上から可動性と安定性が交互に並んでいるのにお気づきでしょうか?どこを安定すべきか、どこを動かすべきかが分からなくなったら、首・肩甲骨から順に可動性→安定性→可動性・・と交互になっていると覚えてください。
今回のテーマ「肩甲骨」は、②の可動性(モビリティ)が求められますから、トレーニングによって柔軟性を高めておく必要があります。
では肩甲骨の柔軟性が欠如すると、ゴルフにどのような影響を及ぼすかを考えてみましょう。
ゴルフ雑誌のレッスン記事などで、「バックスイングで肩を回せ」という記述をよく見かけます。
しかし、肩は胸郭の一部であって回すことはできません。肩を回すとは、肩甲骨が背骨から遠ざかる動き(水平外転)をしながら、胸椎が回旋する動きです。
肩甲骨が硬い人は、この水平外転が十分にできず、スイングに必要な体の捻転が不足してしまうのです。
また腕を前方に伸ばす動作は、左右の肩甲骨が背骨から遠ざかる水平外転しながら行います。よって肩甲骨が硬いと腕を十分に伸ばすことができず、スイングアークが小さくなります。
これらのことから、肩甲骨が硬いと“飛距離不足”という不具合が生じることがお分かりいただけると思います。
また脇をしめる動作は、肩甲骨を下げることによって可能になります。
肩甲骨が硬く、十分に下げることができないと脇が甘くなり、スイング軌道が不安定になります。またスイング中に行う腕のローテーション(上腕骨の外旋や内旋)も肩甲骨の柔軟性が不可欠ですから、肩甲骨が硬いとこの動作が十分に行えず、スイング軌道が不安定になり、方向性やミート率で問題が生じます。
肩甲骨が硬い人は、得てして首も硬いです。
首が硬いと飛ばないだけでなく「ヘッドアップ」もしやすくなります。なぜなら、安定して飛ばすには、頭の位置や顔の向き、目線を安定させつつ、ボディをより素早く回旋させる必要があり、それには首の柔軟性が不可欠だからです。
首の柔軟性が足りないと、体と一緒に首も回ってしまい、ダフりやトップなどのミスが出やすくなります。
肩甲骨の柔軟性欠如も姿勢の崩れから
肩甲骨が硬い人は、姿勢が崩れている人が多いです。
具体的には、背中が丸くなり頭が前にでる「猫背」や、両肩が前にでて胸が狭まる「巻き肩」です。
横から見ると、背中がアルファベットのCの字のように丸まっているので「Cポスチャー(上位交叉症候群)」といいます。【図1】
【図1】
姿勢が崩れた状態は、ある筋肉が短く収縮している、あるいは、逆にある筋肉が伸びて弛緩していることで、骨格が本来あるべきポジションにない状態です。
筋肉は繊維でできており、ゴムに似た性質があります。収縮したゴムは弾力がなくなり十分伸ばすことができません。
一方、だらりと伸びてしまったゴムも、その張力は低下してしまいます。筋肉も同じで、適度な長さが保たれていれば、柔軟性も筋力も十分発揮できますが、その長さが保たれず、収縮しても弛緩しても、その能力は低下してしまいます。
理想的な姿勢は、人の身体を直立した状態で横から見たとき、耳、肩、腰、膝、踝が同一線上に並んだ状態です。【図2】
ここでいう肩とは「肩峰(けんぽう)」という肩甲骨の一番出っ張ったところで、上腕骨を上から包み込んでいるところです。
本来、耳はこの肩峰の真上になければなりませんが、殆どの現在人は耳が肩峰より少し前に出ています。これが酷くなった状態が猫背です。
【図2】
このような姿勢の人は、図1に示すように肩甲骨を動かす「僧帽筋」という大きな筋肉の上部や、肩甲骨と頸椎(首の骨)をつないでいる「肩甲挙筋」となどの筋肉が収縮して硬くなっています。
また僧帽筋の下部や、肩甲骨と胸椎(背骨の背中あたり)とをつないでいる「菱形筋」、肩甲骨と肋骨をつないでいる「前鋸筋」などが弛緩し弱くなっています。
つまり猫背の人は、肩甲骨の上側の筋肉が収縮して硬くなり、肩甲骨下部の筋肉が弛緩して弱くなっています。つまり、肩甲骨を動かす機能が著しく低下してしまっているのです。
肩こり等のカラダの不調も姿勢の崩れから
厚生労働省の国民生活基礎調査によると、日常生活で自覚しているカラダの不調、男性の第一位は腰痛、二位が肩こり。女性の一位が肩こり、二位が腰痛です。男女とも、肩こりは腰痛と並んでカラダの不調トップ2です。
肩甲骨の柔軟性を高めると、肩こりも解消されます。なぜなら、肩こりは首から肩甲骨にかけての筋肉(僧帽筋上部)が硬化し、血流が悪くなることで引き起こされるからです。そして、その原因も殆どが姿勢の崩れです。
なぜ姿勢が悪いと、こうもカラダに不調が生じるのでしょうか?
その理由の一つに、人間の体の大きな特徴である「頭が重い」点が挙げられます。他の動物と比べて、脳がとても発達しているからです。
その発達した脳のお陰で、人類は高度な文明を築き、ゴルフを始め、スポーツを楽しむ文化を獲得したわけですが、その一方で、大きく重たい頭を獲得したが故、首や肩に大きな負担が強いられ、肩こりに悩まされる結果となったのです。
この大きく重たい頭(脳)を支えながら、ヒトは生活をし、仕事し、ゴルフなどの余暇を楽しんでいるわけですが、それには均整の取れたバランスの良い姿勢が必要不可欠なわけです。
では人間の頭の重さはどれ位だと思いますか?
人間の頭の重さは、体重の8分の1から10分の1といわれています。体重が60kgの人であれば、6~8kgです。
これは13~17ポンドのボーリングのボールとほぼ同じ重さです。500mlのペットボトルにすると12~15本分にもなります。
こんなに重たいモノを首で支えているわけですから、首に大きな負担がかかるのも頷けるでしょう。【図3】
【図3】
特に日本人は、欧米人と比べて頭が大きく、かつ首から肩周辺の骨格がきゃしゃなため、肩こりになりやすいと言われています。
この重たい頭の重心が、人間の体の中心を貫く「正中線」上にあれば、その負担を最小限に抑えることが出来ます。
ところが現代人は、生活の利便性や交通機関の発達で運動不足になり、かつパソコンやスマホ等の普及で前かがみの姿勢を取ることが多くなり、そのことで姿勢が崩れ、重たい頭を不自然に支えなければならず、首と肩に大きな負担を強いる結果となっているのです。
肩甲骨の柔軟性欠如で起こる様々なカラダの不調
肩甲骨の柔軟性欠如は、肩こり以外にも以下のような様々なカラダの不調を引き起こします。
①全身の血流不良
肩甲骨周辺の筋肉は広くて大きいため、それらの筋肉がこり固まると、肩周りだけでなく、頭や腕、体幹部、そして下肢と全身の血流が悪くなります。
血行が悪くなると老廃物が溜まりやすくなり、むくみや冷えなども起こりやすくなります。
②眼精疲労
パソコンやスマホの普及により、現代人は非常に目を酷使していますが、肩甲骨が硬いと血行が悪くなり、より眼精疲労が悪化すると考えられています。
③自律神経の乱れ
自律神経は背骨を通って全身に張り巡らされていますので、姿勢が悪く、肩甲骨の柔軟性が欠如すると、自律神経は正常に機能しなくなります。
④心肺機能の低下
姿勢が悪く、猫背や巻き肩の人は常に胸部が圧迫された状態になり、心肺機能が低下します。
また肩甲骨や肋骨周辺の筋肉が硬くなると肺が膨らみづらくなり、呼吸が浅くなります。呼吸が浅いと取り込む酸素量も減少するため、脳をはじめ人間の機能そのものが低下してしまいます。
⑤太りやすくなる
姿勢が悪いとカラダが動かしにくくなり、筋活動が低下します。
筋活動が低下するとエネルギーの消費量が低下します。エネルギー消費が低下すると、消費カロリーより、食べ物などで取り込む摂取カロリーの方が多くなり、太りやすくなってしまうのです。
しかも体脂肪には、脂肪を分解し、燃焼させる「褐色脂肪細胞」というものがあり、それは肩甲骨周辺に多く存在します。
肩甲骨の柔軟性が欠如するとその周辺の褐色脂肪細胞が活性化されず、代謝が低下し、太りやすくなってしまうのです。
ゴルフフィットネスで肩甲骨の可動域アップ
姿勢が崩れ、肩甲骨周辺の筋肉が硬くなること引き起こされるゴルフの不具合や、肩こりなどのカラダの不調を列挙しましたが、逆にいうと、正しい姿勢を獲得し、首や肩の柔軟性を高められれば、ゴルフのあらゆるミスを軽減させ、飛距離を伸ばすだけでなく、肩こりを解消させ、太りにくい健康なカラダを獲得することにつながります。
では、どうすればよいのでしょうか?
それにはやはり運動です。ヨガやピラティスなどは効果的ですが、ゴルフの練習前やコースラウン前に、毎回ヨガ教室に通うのは現実的ではありません。
そこでお勧めするのが、私が主管するゴルフスクールで取り入れている運動プログラム「ゴルフフィットネス」です。
幾つかある運動種目のうちの一つ、「楽体」(ラクダ)というゴムチューブのような運動補助器具を使った、肩甲骨の可動域アップのための運動を紹介します。
運動補助器具を使うので、正しいやり方さえ知ればインストラクターの指導や介助がなくても比較的安全に、かつ運動が苦手の方でもやさしく実践することができます。(写真参照)
【首の回旋運動】
楽体ボールを首の後ろにあて、左右均等に引っ張りながらゆっくり首を回してください。
背筋は伸ばす。力まず頭の重さを利用して運動しましょう。斜めにタスキ掛けでも同じように行います。
楽体ボールを髪の生え際あたりにあて、斜め上方に引っ張ると、天柱(てんちゅう)という、頭痛や肩こり、そして眼精疲労に効くツボを刺激することができ、疲労回復に効果的です。
※左右5回ずつ、ゆっくり回します。
※タスキ掛けでも同様に(写真左) 眼精疲労に効くツボ「天柱」を楽体ボールで刺激する(写真右)
【肩のバタフライ運動】
楽体を背中の後方で水平に引っ張りながら、ゴムの収縮を利用して蝶が羽ばたくイメージで腕をテンポよく前後に動かします。
できるだけ楽体が背中に触れないように注意して運動してください。
※肩甲骨を内転させる意識を持つ。楽体の張力を利用する。
※(応用編)左右の腕の角度を変え、斜めにして同様に行います。
楽体運動は、ヨガスタジオやフィットネスクラブなどに通わなくても、自宅やオフィスで簡単にできるので、忙しいビジネスマンに持ってこいです。
楽体をお持ちでない方は代用品でも結構です。
運動は、ゴルフのときや肩がこったときだけやるのではなく、日常的に行い、運動を習慣化しましょう。楽体をオフィスの引き出しに入れておき、仕事の合間のすき間時間に行うと良いでしょう。
運動を習慣化することで、均整の取れた姿勢を維持し、肩甲骨の柔軟性を高め、肩こりしにくい体を獲得することが大切です。
肩こりから解放されれば、仕事の能率も向上し、ゴルフのミスも減らせることが出来るでしょう。是非取り組んでください。
コラムを最後までお読みいただきありがとうございます。
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次回は、「ミート率を上げて飛距離をのばす方法」について、Cittaからの質問に答えます!
お楽しみに!