『コラム』
- サン・クロレラ
- 2024/12/10
20歳のフットサル日本代表、世界最高峰リーグで挑む世界最高選手への道のり
世界に名をとどろかせるFCバルセロナのトップチームで、日本人選手がプレーする。
そんな漫画の中のような夢物語を、現実として歩む選手がいる。
原田快、20歳。
サッカーと同様に世界的名門であるフットサル部門に招かれて、日本人選手として初めてトップチームの一員となった。
スペインに渡って2年目での快挙だったが、決して順風満帆なシーズンではなかった。
だが、そこで目にしたこれまで見たことのない景色を力に変え、スペイン挑戦3年目からの新たな地平を切り開こうとしている。
スペインでの2年目を前に掲げた目標
原田選手は、自らのチームを「B」と呼ぶ。
愛称バルサの「B」ではない。トップチーム昇格を目指して若手が切磋琢磨する「Bチーム」のことだ。
FCバルセロナ・アトレティックという正式名でスペイン2部リーグを戦っているが、あくまで選手たちは「Aチーム」、つまり世界の頂点を争うトップチームに入るべく、研鑽を積んでいる。
バルサBでスタートしたスペインでの2年目、2023-24シーズンを前に、原田選手もそのための道筋を思い描いていた。
【原田快選手(以下敬称略)】1年目はできなかった、トップチームに関わることをひとつの目標にしていました。
そのために、自分のチームであるBで、ちゃんと活躍するということを目指しました。
ルーキーイヤーの2022-23シーズンには、すぐさま主力に定着して5得点15アシストという結果を残すことに成功した。
「Bだったら、15得点15アシストくらい」と設定した目安も、2部リーグを1年間戦い抜いた肌感覚からすれば、決して高すぎるものではなかっただろう。
Bチームの選手たちにとっては、毎日がオーディションだ。
「Aチームの監督はBの試合を見て、誰をトップに引き上げるとか、練習に参加させるかを決めます。それもあって、試合での活躍を意識しますね」と、Bチームの日々を振り返る。
率直に語って、初年度のような好スタートは切れなかった。だが、「その時」は突然訪れた。
【原田】Aチームで、急にケガ人が増えたんです。Bチームも同じ状態だったんですが、突然『ココロ、トップの練習に行くぞ』と言われて。それからAチームとBチームの練習を行き来していました。
トップチームで体験した「異次元」
同じクラブでありながら、トップチームでは練習から「異次元」が広がっていたという。
【原田】レベルが全然違います。練習中にもオーバーヘッドでゴールを決めたりするんです。
驚くようなプレーが多くて、最初の頃は『うまいな、どうやったらできるんだろう』と思いながら見たり、一緒に練習していました。
映像もよく見て、技術を盗もうとしていました。1対1の技術など攻撃のバリエーションを増やしたかったので、うまい人の真似をして、自分もうまくなろうとしていました。
その技術をBの練習でも試すことで、だんだんと何をやっているかが分かっていきました。
AとBの行き来を続けて4週間後、さらなる朗報が届く。
正式に、トップチームの試合のメンバーに入ることが決まったのだ。
【原田】ある日の練習後、『今週、試合のメンバーに入るぞ』と言われました。めちゃくちゃうれしかったですね。
そうしたら、責任者の方が冗談が好きな人で、『ユニフォームの在庫がないんだ。Bチームと同じ5番か、それとも0番のどちらがいい?』と聞かれたんです。
0番というのはベンチ外、という意味なので、『5番でいきます!』って答えました(笑)
バルサBの試合は、練習で使っているアリーナを会場として使用する。2部リーグということもあり、観客は多くても300人程度だというが、トップの試合になると、まさに“ケタ違い”となる。約7500人収容の「パラウ・ブラウグラナ」が人々の熱気で埋まるのだ。
【原田】観客席から見るのと、実際に中に入るのとでは、聞こえてくる歓声も全然違いました。最初の試合ではまったく出られなかったんですけど、あり得ないくらいに緊張しました。
会場に向かうバスの中で、チームメイトに『オレ、緊張してる』って言ったら、『使ってもらえなくなるから、絶対監督にそんな話はするなよ』って笑われました。
基本的に緊張することなんてないから、たぶん人生で一番緊張したと思います。
「世界一の選手」になるため必要なもの
試合が始まってからも、新たな驚きと発見があった。
【原田】練習中とは、全然プレーが違うんですよ。
練習からプレー強度は高いんですけど、ケガをしないようにやるので、まだ本気じゃない感じはありました。でも試合になると、一気に強度が上がるんです。
トップで試合に出るようになっても、ボールに一切触れられない時期がありました。
足手まといというか、やりづらかったと思うんですが、最初はまったくボールが回ってこなかったんです。
先ほど話したように、盗むように技術を学んで、プレーのタイミングも周囲とまったく同じように真似することで、だんだんとプレーに入れるようになっていきました。
出場はかなわなかったものの、欧州の頂点、つまり世界一を決めるUEFAフットサル・チャンピオンズリーグの決勝トーナメントも体感した。
【原田】チャンピオンズリーグではファイナル4に残る前から帯同していて、そのリーグ戦もすごかったんですが、決勝ラウンドになると全然雰囲気が違うんです。
皆、本気で勝ちにいく、負けちゃいけない、という雰囲気を醸し出していました。そういうものを感じることができました。
バルサのトップチーム、つまり世界最高峰を体感することで、自身の大きな目標である「世界一の選手」への距離感もつかめたようだ。
【原田】足りないものは、いっぱいあります。
ゴールに向かう意識や攻撃のバリエーション、体の強さとか…。
体の厚みが全然違うんですよ。体幹がめちゃくちゃ強くて、バンと体をぶつけられても倒れない。そういうものを、僕も取り入れたいなと思いました。
僕自身、攻撃面は平均よりも上だと思うんですが、ディフェンス能力が足りません。
例えば、相手に裏に走られた時に腕を使って止めるとか、僕が全然できない点をトップチームの選手には何度も指摘されました。
そういう守備ができるようになれば、あのレベルでも戦っていくことは可能なのかなと思います。
でも、全然Bチームと違うと思ったのは、に向かう姿勢ですね。
トップチームだったら、ボールが空中にあろうが、どんな体勢でもゴールに向かうんですよ。
原田選手もまた、自分のゴールから目をそらすことなく、前進を続けていく。
▼後編はこちら
⇒プロフットサルプレイヤー原田快 世界最高峰リーグで挑む世界最高選手への道のり 後編
PROFILE
フットサルプレイヤー 原田快選手
大阪府出身 フットサル歴17年
FCバルセロナ所属 ポジション:ALA
2013年から海外留学に挑戦、瞬く間に日本選抜チームに選出される選手へ成長。
2018年には、FUTSAL WORLD CUPにFCバルセロナの一員として出場し準優勝。その後2019年は、U18カテゴリーで東京リーグで得点王、全国大会優勝を飾る。
2022、2023年は、日本代表に選出され、AFCフットサルアジアカップ・クウェート大会優勝、6ヵ国国際親善大会準優勝。
FCバルセロナ・ユースにて、スペイン1部ユースリーグ全国大会優勝、
WORLD FUTSAL CUPでも優勝を飾り、MVPにも選出された。
2024年は、FCバルセロナ・トップチームのメンバーとしてUEFAフットサル・チャンピオンズリーグ・決勝ラウンド帯同。
現在FCバルセロナからショタFSへ期限付き移籍