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『コラム』

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ニセコインターナショナルクリニック
2025/01/23

ウィンタースポーツをするときの心得〜咳などの呼吸症状〜

こんにちは、DoctorTです。ここ最近、冬山のクリニックでは咳の症状を訴える患者さんがとても多いです。もともと喉の症状があって雪山に来て悪化したという人が多い印象です。地元では平気だったのに、ここに来て悪化するには理由がありそうです。

運動をした時の息切れにはたくさんの理由があります。運動不足ももちろんその一つですが、冬山での咳は喘息のような症状(咳や息苦しさ)と似ているのでそれについて説明します。

喘息は息の通り道(気管支)が過敏になっている

喘息は、息の通り道(気管支)の表面が過敏になり、外部からの刺激により、咳が出たり、気管支の空気が通れる空間が狭くなることによって起こる呼吸器の疾患です。普段は平気な刺激に対しても過敏に反応してしまうので、普段はこれくらい大丈夫なのに…という状況でも咳が止まらなくなったりします。
体の中で首を絞められている状況というとイメージがつきやすいかと思います。運動時に誘発される同様の病態があり、「運動誘発性気管支狭窄(きかんしきょうさく)」という名前がついています。

呼吸器問題を抱える選手が多いスポーツ

スポーツ選手の中で、ウィンタースポーツ、水泳、持久耐久競技の選手はこういった呼吸器問題を抱えている人が多く、エリートアスリートのほうがリスクが高いです。喘息の吸入を使っている選手の割合は、以下の通りです。(Fitchら2021年)

夏の競技:1位トライアスロン、2位自転車、3位水泳
冬の競技:1位クロスカントリー、2位ノルディック複合、3位スピードスケート

気管支がダメージを受ける要因

なぜウィンタースポーツ、水泳、持久耐久競技の選手はこういった呼吸器問題を抱えている人が多いかというと、気管支の上皮細胞がダメージを受ける原因が、
①「乾いた」「冷たい」空気に触れる
②呼吸回数が増える
③塩素などの刺激物質に暴露される
であるからです。

ウィンタースポーツをするときの心得〜咳などの呼吸症状〜

持久系スポーツ:乾いた空気をたくさん呼吸し粘膜を傷める

気管支の細胞が傷つくメカニズムは気管支上皮細胞での物理的なダメージと脱水です(上の図)。こういった細胞のダメージが繰り返されることによって、喘息や喘息のような症状が引き起こされてしまうのです。

冬山でウィンタースポーツをするときの環境

実は、冬の雪山でスノースポーツをするときは以下のような条件が揃っていて、上の気管支の上皮細胞がダメージを受ける環境なのです。
1. 外気(スキー場の空気)は乾燥して、冷たい
2. 遊びのスキーやスノボのときでも息は上がっている(呼吸数が増えている)
3. ホテルなどの室内は暖房が効き、空気が乾燥している
4. インフルエンザなどの流行する季節である
5. 長距離移動のあとで疲れている

準備をしてウィンタースポーツを楽しもう

のような環境があることを知り、準備をした上でぜひスキーやスノーボードを楽しんでもらいたいと思います。
• 体調を整えておきましょう。調子が悪いときは無理をしない。
• 吸う空気の湿度を上げる(吸気の保湿)
  1. 滑るときにはネックウォーマーなどで口を覆う
  2. 鼻呼吸を心がける
  3. こまめに水分を摂る
• 喘息などの呼吸器の持病があるひとは、吸入薬など悪化したときの対処を持っていきましょう。かかりつけ医に相談しておくのもよいでしょう。

まとめ

• 冬の雪山で咳を訴え受診する人は多い。
• 冬山でのウィンタースポーツには気道を過敏にする要素が揃っている。
• 原因は乾いた空気、冷たい空気、呼吸回数(換気量)の増加。
• この環境への準備をしてウィンタースポーツを楽しみましょう!

リスクがあるから、ウィンタースポーツをやってはいけないというわけではありません。状況をちゃんと把握して、準備することが大切です。ちょっとした心がけで状況は変わり、スキー旅行が楽しいものになることと思います!せっかくの旅行ですから、ぜひ楽しい思い出を作ってほしいと願っています。



DoctorT

2020年英国UCLでスポーツ医学の修士課程を修了しました。大切だけどあまり知られていないスポーツ医学情報を発信します。
北海道大学卒業。家庭医療専門医。後期研修中、米国での家庭医によるスポーツ診療を知り、興味を持つ。医師12年目に留学を決意。


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