『コラム』

- ニセコインターナショナルクリニック
- 2025/03/13
運動ががんのリスクを下げるのはなぜ?
こんにちはDoctorTです。北海道も晴れの日が増え雪の量も減ってきました。春が見えてきましたね。みなさんはいかがお過ごしでしょうか。 冬も終わりに近づいてきたので、ウィンタースポーツではないネタをお話しようと思います。先日、「ストレス:新しいがんのリスクファクター?」という記事を見つけました。このウェブサイトは米国でも研修医が調べ物をするときに使うような信頼できる情報源です。この内容は結論が出たものではなく、可能性があるというレベルの話ですが、今後研究が進み解明される可能性があります。
ストレスががんのリスクかもしれない?
若い女性で家族歴や遺伝の要因もなく乳がんと診断されるひとが少なからずいるということから、この研究者はストレスも一つの原因かもしれないと考え、私も理にかなっていると言っています。
ストレスとガンの発症の関係はさらに研究が必要ですが、ストレスにさらされた人にはがんになりやすい体中環境の変化がみられたということです。この変化については後ほど説明します。
運動ががんの予防や治療に効く
運動が一部のがんの予防や治療に効果があることが証明されていますが、乳がんもその一つです。 (ブログで詳しく説明しています)
アメリカの CDCのウェブサイトによるとガイドライン推奨の運動をすると乳がんの8分の1 (13%)が防げるようです。
がんが育つ環境
①慢性の炎症、②インスリン抵抗性、③酸素不足による新生血管の増殖などががん細胞を生み出し成長を促します。すこしむずかしい言葉になってしまいましたが、がんになる仕組みは単純ではなく、こういったものが複雑に絡み合っているということがわかれば大丈夫です。
運動はこれらのいくつかに対して抑制(がんにならない方向)に働きかけるのです。

ちなみに慢性の炎症はがんだけではなく、脳卒中や心筋梗塞などの原因になる動脈硬化にも影響していますし、インスリン抵抗性は糖尿病にも影響します。運動はこれらの病気の予防や進行を抑えるのに効果的だと言えます。
ストレスはこれらの要素を促進する
さらに今回の記事ではストレスがこれらの炎症、免疫システムへの悪影響、血管新生を促進すると言っています。ストレスというのは親しいひととの別れや日常の仕事のストレスなど個人的なストレスから、偏見など社会的ストレス、さらに環境の悪さなどの更に大規模なストレスまで幅広く存在します。しかし、これらのストレスを減らすのは簡単ではありません。
では、自分でできるストレスの感じ方を減らす方法はないのでしょうか?
答えの一つが「運動」だと思います。日々のストレス発散方法として運動はとても効果的でしょう。
運動はストレスの感じ方を軽減する作用もある

運動はがんになる要素も抑制し、それらの要素を促進するストレスをコントロールでき、あらゆるアプローチからガンを抑制できる「一石二鳥」な方法と言えます。
まとめ
・ストレスはガンのリスクファクターのひとつなのかもしれない
・ガンが起こる仕組みは慢性炎症、インスリン抵抗性、免疫の異常や血管新生など複雑な要素が絡み合っている
・運動はそれらの要素を抑える方向へ働く
・運動はストレスの感じ方を軽減させる可能性がある
・運動はがんの予防、進行抑制に効果がある
がんの多くは予防できると言われています。感染が原因の子宮頸がんはワクチンができました。日本でも多い大腸がん、乳がんは、もちろん遺伝もありますが、生活習慣も大きく影響していることがわかっています。
運動をしてがん予防だけではなく、元気で充実した日々を過ごすためのからだづくりをしてはいかがでしょうか。
DoctorT
2020年英国UCLでスポーツ医学の修士課程を修了しました。大切だけどあまり知られていないスポーツ医学情報を発信します。
北海道大学卒業。家庭医療専門医。後期研修中、米国での家庭医によるスポーツ診療を知り、興味を持つ。医師12年目に留学を決意。