『コラム』

- 野村整形外科
- 2025/04/13
【野村整形外科】日常生活・スポーツで 起こりやすい外傷・傷害 足関節捻挫編
前回は投球障害肩の説明、予防方法、リハビリテーションと3部にわたりご紹介させていただきました。
今回は、足関節捻挫についてご紹介させていただきます。
足関節捻挫は足首の関節(足関節)を捻ることによって、
くるぶし周辺に痛み、腫れ、圧痛などの症状が現れます。
足関節捻挫は、スポーツ中での怪我としては一番多く、靭帯を損傷することから
足関節靭帯損傷と呼ばれることも多いです。
階段の踏み外しなど日常生活でも起こりやすいため、身近な外傷として放置されがちですが、放置すると痛みが長期化したり、不安定な足関節となったりして、その後の治療が難航することもあります。
足関節には、体を支える脛骨・腓骨といった脚の部分と踵骨といったかかとの骨があり、立っている際に体重がかかりやすく、痛みや疲労を感じやすい部位でもあります。
足関節捻挫には、大きく分けて2つあります。
・内反捻挫
足を内側に捻ることで起こる捻挫で、足関節の多くはこの内反捻挫になります。
主なスポーツとしてはバスケットボールやバレーボールなどのジャンプや切り返しを主とする競技で多く発生します。
・外反捻挫
内反捻挫とは反対に足を外側に捻ることで起こる捻挫です。
ラグビーやレスリング、柔道など競技者同士での接触が多いスポーツで多くみられます。
足関節捻挫の症状
足関節捻挫の症状は大きく3つに分けられます。
・Ⅰ度
外くるぶしの前下方付近に軽い腫れと圧痛が現れます。
歩いたり走ったりすることは可能です。
・Ⅱ度
くるぶしの広範囲に腫れと圧痛が現れます。
歩けても走れないことが多くなってきます。
・Ⅲ度
くるぶし周囲に強い腫れ・圧痛・内出血がみられます。
歩行することも困難になります。
可動域の低下も認められることも多いです。
足関節捻挫の検査、診断方法
一般的に問診や触診から診断可能ですが、骨折や他の疾患との鑑別のため、レントゲンやエコー検査を用いて画像検査を行うことがあります。
・問診、触診
痛みなどの症状や発症時の様子などについて詳しく伺います。
また、触診ではくるぶしの前・下を中心に圧痛や腫れがあるかどうか確認します
・X線検査(レントゲン)
骨折の有無を調べるために実施します。高度な靭帯損傷が疑われる場合、緩みを確認するため関節にストレスを掛けてレントゲン撮影を行います。
・超音波検査(エコー検査)
骨折がない場合、レントゲン写真では写らない筋肉、腱、靭帯の損傷や、内出血など組織の炎症をエコー検査を用いて確認します。
また、必要に応じてMRI検査を用いて検査することもあります。
足関節捻挫の治療法
足関節捻挫の受傷直後は、RICE処置を用いて安静を保ちます。
捻挫では、特にこの応急処置が大切になります。
RICE処置について
RICE処置では、幹部の出血、痛み、腫れを抑えるために用います。
1:幹部を安静にする【Rest】
2:氷で冷却する【Icing】
3:弾性包帯やテーピングで圧迫する【Compression】
4:患部を挙上する【Elevation】
※挙上…心臓より高い位置に上げること
応急処置、医療機関での受診後の治療方法はほとんどは【保存的治療】で対応します。※Ⅲ度捻挫の場合は外科的手術を用いることもあります。
安静後は、理学療法士の指導のもとリハビリを行い、機能、筋力低下の強化、再発防止を目指して行います。
・保存的治療
適切な固定や安静期間を設けて人体を回復させ、関節の不安定性が残らないように再発防止を目指します。中途半端な状態での日常生活や競技復帰をした場合、更に悪化する可能性があり、軟骨変形や関節がうまく動かせない状態の原因になるため、正常な歩行が行えるまでは松葉杖を用いることがあります。
・安静/固定
Ⅰ度:テーピングやサポーター、包帯による固定
Ⅱ度:シーネ固定
Ⅲ度:ギプス固定
軽症の場合は、2〜3日程度、重症の場合は数週間程度の安静を設けます。
・薬物療法
湿布を用いて腫れや熱感の軽減を促します。
・リハビリテーション
リハビリテーションでは医師の指示のもと、理学療法士より筋力強化、再発防止を目指しリハビリ治療を行います。
足関節捻挫では、主に受傷2週間後から患部外のトレーニングを開始します。
腫れ、痛みが消失し、歩行ができるようになってきたらバランス力や筋力低下を防止するためのストレッチ・トレーニングを行い徐々に強度を高め再発防止に努めます。症状によっては松葉杖を用いた歩行荷重訓練から行う場合もあります。
・外科的手術
関節の不安定性が強い【Ⅲ度損傷】では、外科的手術による”靭帯再建術”を行うことがあります。
まとめ
足関節捻挫は日常生活でも起こり得る一般的な怪我ですが、多少の傷みがあっても運動ができてしまうことがあります。軽い症状であっても放置してしまうと、関節の不安定性から捻挫の症状を繰り返してしまう後遺症が残ることがあります。足を捻った場合は、まずは応急処置としてRICE処置を行い安静にし、医療機関へ受診してください。