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『コラム』

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ニセコインターナショナルクリニック
2025/08/07

大腸がんになっても運動をしよう

今回は2025年のアメリカ臨床がん医学会で発表された内容の紹介です。”Can Lifestyle Changes Save Lives in Colon Cancer?”(リンクはこちら)。タイトルを訳すと「生活習慣を変えたら(良くしたら)大腸がん患者の命は救えるか?」となります。

いくつかのがんは予防ができる

以前の記事でもお話しましたが、がんというのは細胞が「異常に」増えていく病態をいい、その原因は様々です。子宮頸がんはHPVというウィルス感染が原因です。乳がんや大腸がんは遺伝の要素もありますが、生活習慣が大きく影響していると知られています。感染も不健康な生活習慣も予防や改善が可能、つまりがんを予防したり進行を遅らせたりすることが可能なのです。

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「運動で乳がん予防と再発率低下を!」
「運動ががんのリスクを下げるのはなぜ?」

今、がんと診断される人が増えている理由として、もちろん、寿命が伸び、診断能力が上がったということが挙げられます。しかし、生活習慣が悪化してリスクが上がっているということも忘れてはいけません。

手術や化学療法に運動を加えると

がんの治療の主軸は手術と化学療法ですが、それに運動と食事を加えるとがんの再発率が下がるということがわかってきました。体を動かしてきた人たちはそうでない人と比べ、再発率と死亡率が低いという結果がすでにいくつかの研究で示されています。

運動と大腸がん

運動で再発や新規がんの出現抑制も

大腸がんのステージ3とステージ2のハイリスクグループに対して、下の運動をしたら5年後に28%の再発が抑えられていたということです。これは、「16人が下の運動をしたら、1人はがんの再発や新しいがんの出現が予防できた」ということになります。また、8年後の死亡率で見ると「14人が運動をすると1人の命は救える」計算になるという結果が出たそうです。


研究で使われた運動

手術→化学療法の2−6ヶ月後から運動を開始。
最初の6ヶ月は月2回、トレーナーや理学療法士などの指導の下、患者の好きな有酸素運動を選んで運動をし、6ヶ月後以降は月1回の指導あり。
45−60分の息の上がるウォーキングを週3−4回


運動は手術や化学療法の代わりにはならない「サプリメント」

これらの研究は手術や化学療法など標準的ながん治療をした後に運動をしたひとと、そうでない人を比べたもので、運動が手術や化学療法に取って代わるものではないことは強調しておきます。


運動ががんに効く理由

以前にも書いたことがありますが、癌になる原因の一つとして細胞レベルでの炎症や免疫の異常があります。運動をするとこれらを抑えているということはすでに細胞というミクロのレベルでわかっています。
細胞レベルでよさそうだとわかっていることを、実際に「ひと」という大きな枠組みで見たらどうなのか、つまり「運動することでがんのひとは長く生きられるのか」というのを現在研究中ということです。そしてまだ結論は出ていませんが、おそらくがんの再発やからだの衰えが減り、長く生きられそうだということです。

食事も大切

運動と同時に健康的な食事も大切なのは言うまでもありません。食べ物の中で、炎症を引き起こしやすいと言われているものがあります。これらが毒というわけではありませんが、減らしたほうがいいものだと理解するのがわかりやすいと思います。

また、炎症を抑えると言われる食物もあるので、これらをあまり食べていないと思うならば食べる機会を増やすのもいいですね。一気に大量ではなく、少しずつ継続するのが重要です。私は毎回サラダにくるみを割って入れています。こうした小さなことも積もれば山となります。少しずつ使うので、多少値段がはっても、数ヶ月持つのでコスパは悪くないと思います。

大腸がんになっても運動をしよう

もちろん運動と良い食事の合せ技がベスト

運動習慣ある人は大腸がんの再発率が下がっていることがわかり、食事も炎症を起こすものを食べている量が少ないグループでは進行大腸がんの死亡率が低くなっていることがわかりました。
もうお分かりだと思いますが、これらを組み合わせればさらによくなりますね!
このことは別の研究でも示されており、「炎症を起こしやすい食物の摂取が一番少ない+運動をしているグループ」はその真逆の「炎症を起こしやすい食物を頻回に食べる+運動をしていない」グループに比べて死亡率が下がっていました。
(63%のリスク減少、HR0.37、p<0.001)
*ここでの運動は息の上がる運動30分を週5日以上としています。

まとめ

がんには予防できるものがあり、大腸がんはそのひとつ
進行大腸がんの治療の基本は手術と化学療法
基本治療「+生活習慣改善」で再発が抑えられる可能性↑
運動:30分くらいの息の上がる運動x週5日
食事:炎症を起こす食品を減らして、炎症を抑える食品を増やす

最近はがんになることがとても身近になってきています。不安になると思いますが、よいニュースとして、研究が進み多くのことがわかってきています。今は、がんになってしまったら終わりではなく、再発を抑えて今まで通りの生活を取り戻すことも十分可能で、それを自分の行動で実行する時代です。

食事や運動、睡眠やストレスマネジメントといった生活習慣の改善はがんだけではなく、心臓病などの他の病気にも抑制効果があります。もっと身近なことでは、気分も前向きになり、疲れにくくなるという効果があります。疲れている、眠れないというのは現代人の悩みではないでしょうか。

人に命令されてやる気の出る人はいません。この話を聞いて、自らの意思で、できることからやってみようと思ってもらえればいいなと思います。



DoctorT

 2020年英国UCLでスポーツ医学の修士課程を修了しました。大切だけどあまり知られていないスポーツ医学情報を発信します。
 北海道大学卒業。家庭医療専門医。後期研修中、米国での家庭医によるスポーツ診療を知り、興味を持つ。医師12年目に留学を決意。


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