『コラム』

- ニセコインターナショナルクリニック
- 2025/10/09
性格に合った運動を探そう!
今回は、私が大学院を卒業したUniversity College Londonの研究室から面白いデータが出ていたので紹介します。タイトルは「あなたの性格がどのようにあなたの運動に影響しているか」です。
すべては運動を楽しく続けられるために!
人は性格によって、どんなことを喜びと感じてモチベーションを上げるのかが違います。そこで今回の研究では、8週間の運動プログラムの前後で、参加者の性格と運動能力、そしてその運動プログラムをどう感じたかを調査しています。私たち医療者の願いは、患者さんに強制的に何かをさせるのではなく、本人がやりたいと思える運動を見つけて、運動をしてほしいということです。
自分にも当てはめて考えてみよう
この記事を読んで、自分の性質にあった運動プランを考えてもらうのもいいですし、もしあなたが運動を指導する立場ならば、これを元にお客さんや患者さんの楽しめるプランを考えるのに役立ててもらうのもいいかと思います。
この研究ではビッグ5と呼ばれる5つの性質
心配性-Neuroticism-
入念-Conscientiousness-
外交的-Extraversion-
経験に対してオープン-Openness-
同調的-Agreeableness-
に焦点を当てています。
性格による運動の好みや傾向
Conscientiousness 念入りなひと
他のタイプの人と比べ、1週間で一番たくさんの時間運動をしていたのがこの性質の人たち。その運動のバランスもよい。どちらかというと痩せていて、活動的。しかし、面白いことに、運動に関して特にどのセッションが楽しいということはなく、どちらかというと楽しみのためというより、自分の健康のために運動をしているという意識が強いと分析されている。
このタイプの人には、運動の健康への効果を強調して説明するといいかもしれませんね。
Extraversion 外交的・社交的な人
楽しいという感情によって運動をしたくなるタイプ。High Intensity Interval Training (HIIT)といった、ハードで苦しいけど達成感のある運動を好む傾向にあるとの結果。筋力よりも持久力が、他のタイプより長けていた。8週間の運動プログラムの成果をみるためのCPET(苦しくて続けられなくなるまで強度を上げながら運動するテスト)で頑張っていたのは、ハードワークの後のすっきり感だけではなく、人に見られているという状況が、よりextraversionのひとを頑張らせたのかもしれないと分析されている。外交的なこのグループの人達は8週後の評価への参加が少なかったのは面白い。スポーツ選手にはこの性質の人が多いというのも納得。
このタイプにはハードなグループセッションがいいかもしれません。グループの人に褒められて益々やる気に!
Neuroticism 心配性
この性質のひとは考えすぎる、心配になってしまう傾向が強い。そのため、10分ほどのストレッチがおすすめ。この傾向のある人たちは、30分ほどハードワークが続く運動を嫌がるが、休憩があればその強度は問題がないようで、HIITトレーニング(強度は強いが、その強度の運動時間は1−2分ほどですぐに休憩が入る)は、それほど苦にならなかったという結果が出ている。人に見られている、評価されているという感覚は好まない。研究室で運動するのは楽しそうではなかったが、自宅での運動はこなしており、8週間後の運動能力は改善していた。このタイプの人は一人で黙々と運動をすることには抵抗がないのかもしれない。また、セッションを終えた後のストレスは軽減していたので、ストレス解消の目的で有酸素運動を勧めるのがいいかもしれない。
このタイプの人は自分のやり方でやるのを好むのでホームエクササイズを中心に教えてあげるのがいいかもしれませんね。健康にならなきゃと思う心配性と念入りな性格の両方を持ち合わせている人はきっちりとスケジュールをこなすようです。
Openness 経験に対してオープン
研究に参加している人たちは新しいことに興味をもっている可能性が高く、このオープンな性質の点数が高い人が多かった。このタイプの人は強度の強いハードな運動は好まないようだったが、8週間後の結果の評価には、一番多くが参加していた。強度の強い運動で8週間後の運動能力をチェックすることになっていたが、強度の強い運動が嫌いなはずのこのタイプのひとが集まった理由としては、自分たちがどれくらい変わったのか興味が湧いたからであろうと分析されている。
このタイプの人には定期的に体力チェックなどをして成果を見せ、新しいエクササイズを紹介していくのが効果的かもしれません。
Agreeableness 同調的
このタイプのひとは特徴的なベースの運動能力の傾向はなし。運動の特徴的な好みもなかったよう。このタイプが主であっても、他に持ち合わせているタイプの影響を受けた行動をするよう。
まとめ
●ビッグ5という性質と運動の好み・行動には関連がありそう
●念入りなタイプの人は楽しみというより健康のために運動をする傾向
●外交的な人はハードな運動を好み、人から見られているとさらに頑張る傾向
●心配性なひとは自分のペースでやりたいのでホームエクササイズ中心がよいかも
●楽しい運動を見つけるというのは運動の継続につながる
性格診断みたいな研究ですが、実際運動をしてもらうには「楽しい」「またやりたい」といった前向きな気分が強力なモチベーションになるため、この傾向を知り、実践に役立てるのは大事なことだと思います。
ストイックが好きな人はそれでいいですし、楽しい方が頑張れる人は、自分が楽しいと思える運動やそういう場所、仲間を探してみてはいかがでしょうか?
楽しく運動して健康な日々を!
DoctorT
2020年英国UCLでスポーツ医学の修士課程を修了しました。大切だけどあまり知られていないスポーツ医学情報を発信します。
北海道大学卒業。家庭医療専門医。後期研修中、米国での家庭医によるスポーツ診療を知り、興味を持つ。医師12年目に留学を決意。