『コラム』
- Citta
- 2022/12/02
コロナ禍のJリーガーの過ごし方とは?~むってぃーのつぶやきシリーズVo.2~
今シーズンで退団を発表された、Jリーグいわてグルージャ盛岡キャプテン、牟田雄祐選手こと、むってぃーのつぶやきシリーズ。
世の中はまさに、カタール・ワールドカップ2022が開催され、世界中がサッカーでアツくなっていますよね!
Vol.1では、Jリーガーとして直面しているサッカー界の変化をお話しいただきました。
⇒「Jリーグでは今こんなことが起きている!」
Vol.2の今回は、前回いわてグルージャ盛岡の選手にいただいたアンケート結果と、実際に牟田選手がコロナ感染を経験された事を踏まえ、療養期間からチームに合流するまでどのように過ごされていたのか、リアルをお話しいただいた。
日々変化する日常
前回Vol.1のコラムを掲載させていただいてから間もなくして、牟田選手の周りでは大きな変化が起こっていた。
第一子となる長男がご誕生されたのだ。
ーー牟田さん!この度はおめでとうございます!
【牟田雄祐さん(以下敬称略)】ありがとうございます!“パパ”になりました!
(牟田さんInstagramより引用)
むちゃくちゃかわいいです。
泣いてても何していても可愛くて、癒されています。
微笑みながらお話しされる姿から、幸せな様子が伝わってくる。
牟田選手の育児のこだわりも気になる所だが、別の機会にお話しいただくとして、本題に戻ろう。
ーー前回のアンケート結果をみて感じた事はありましたか?
【牟田】そうですね~。
隔離があった事で「メリットは一つもない」ことは間違いないなと感じましたね。
また、選手それぞれによって捉え方が結構違うという事も知る事ができました。
常日頃、自分はどちらかというと自分のカラダと向き合っている方だと自負していて、良い時、悪い時のカラダの使い方を考えていたので、戻し方も他の選手よりは多少なりとも分かっていました。
戻すよりは更に一つ上に行けるようにイメージしています。
ですが、隔離後選手によっては、戻っていない選手はずっと調子の悪いままだったりして、かといって別に何かしている訳でもなく、“コロナウイルスに感染したから”“隔離された”という事を理由に、明けた後のコンディションについても話している姿を見ていると、一体その選手は何をしてたの?と疑問を持ちますね。
それは、コロナウイルスに感染したからだけではなくて、「きついな~」「コンディション悪いな~」「調子悪いな~」と感じてから、良い状態に戻すまでは本当に選手それぞれだなと、最近強く感じます。
「きつい」「調子悪い」とは言うものの、“何が?”という所ですよね。
調子を悪くしている原因、その“何が”まで話せる選手が本当に少ないなと思います。
ーーそれは年齢関係なくですか?
【牟田】う~ん。関係ないですね。
自分が選手になって10年目ですが、10年経っている選手でも分かっている訳ではないと思います。
自分も若い時に分かっていたかというとそうではなかったので、もっと自分のカラダと早く向き合っていたら分かっていたかもしれないです。
これまで食事やトレーニング方法などたくさん経験して合わない事もありましたが、その経験があって学ぶことができたので良かったですし、今があるなと思っているので。
ーーなるほど。
【牟田】ちょっとコロナ禍のエピソードとは外れますが、サッカーのプレーだけに限らずですが、「自分調子悪いです」と選手が言っていたり、指導者が「頑張ろうぜ!」と鼓舞する所を見ますが、そこでも“何が?”というところがとても欠けているなと思いますね。
例えば、体を大きくしようという事で筋力トレーニングをするとしても、“何の、どこを、何の為に?”という事が選手にも、指導者にも非常に欠けているなと思いますね。
「点決めよう!」という言葉も、“どうやって?”って。根拠がないですよね。
J1トップを走っているチームには、その考えをしっかり持つ指導者もいますが、まだまだ少ないかなと残念ながら感じますね。
コロナ感染後の選手に関しても、コロナに感染してコンディション悪いから・・・ではなく、だからこそどうする?っていう所ですよね。欠けているなと思います。
そこはどのスポーツ分野でも取り組むべき事だと感じますね。
学校教育でもそうですよね?
先生が言った事を書いて、先生が言った事をやる。
でも、その意味を理解せずにやっている事の方が多いじゃないですか?
自分は、そういうことを結構気になっていた生徒だったので、聞き返しましたが、答えられない先生も多かったなと思います。
聞いて返ってくるのは、「昔からやっているから」とか「流れ」とか・・・。
それで納得できないよなと感じますし、何をするにも自分が理解しないとという事でトレーニングの資格も取りましたし、前にお世話になった高地トレーニングも、みんないいとは言うけど何が良いのかやってみないと分からないと思ってやりましたし、その他の事もやってきました。
スポーツ界も他のチームがやっているからとか、“流れ”でやっているところがまだまだ多いなと感じますね。
そう言った事に今後も切り込んで考えていきたいなと思っています。
ーー牟田さんのお話しを聞いていて、確かにそうだな、と感じます。
【牟田】これからの世代の子達も個性がないというか、とりあえず言った事をただやる事で、どれだけ自分の身に出来ているのかなと思いますね。
コロナ感染を経験した選手の取組み方にも差があるなと感じます。
考えてコンディションを上げようとしている選手もいれば、とりあえず時間が経てば戻るだろうという選手もいますし、コーチが与えたメニューをとりあえずこなす選手もいる。
あまり自発的に行動する選手は少ないなと感じていました。
コロナウイルスに感染して
ーーなるほど。牟田さんも実際にコロナ感染を経験されましたが、その時の事を教えていただけますか?
【牟田】自分は純粋に体調が悪かったですね。動けないほど酷かったです。
何かをするという事は出来ず、とにかく休んで回復するのを待つという感じでした。
その間動ける選手もいる様でしたが、動く事もままならない状態だったので、これは休めという事なんだと、しっかり休んでいました。
10日間隔離状態で、そのうち1週間は体調が悪い状態が続いていました。
復帰して10日経っても咳がずっと続いていたので、その期間は辛かったですね。
動けるのに家出れないという辛さではなく、純粋に体調が悪くて動けないという辛さでしたね。
ーーチームに合流後は、どういったモチベーションでしたか?
【牟田】チームとしては早く試合にも復帰して欲しいという希望をもらっていましたが、自分のコンディションとして、筋力も落ちていましたし、動ける体ではなかったので、まずは“ケガしない事”、無理にプレーをしてケガをする事の方がその後にも影響するので、急ぐ気はなく、自分の体としっかり相談をして体を戻していきました。
動いて1番感じたのは、筋肉の張りでした。
少し動いただけで筋肉がパンパンになりましたね。
肺の辛さはそこまでなく、筋力的な部分でずっと寝ていた事もあって、筋力はだいぶ落ちたなと感じました。
ーーどのような強度で、体の状態を戻していったのですか?
【牟田】結構緩やかに戻していきました。
しっかり戻ってくるのは分かっていたし、足りない所も分かっていたので、そこに対してどう体を慣れさせていくかの問題で、無理せず滑らかに、少し無理する所も作りながら、調整していきました。
試合をやれば戻るのは分かっていたのですが、目の慣れも必要だったので、目と頭の感覚を戻す事も意識していました。
あとメンタル面は、今までずっと試合をコンスタントに行っていた所から離れていた分、少しネガティブになっている所もあったので、常に積極的に、強気にという所は意識していました。
ーーご自身の事をしっかり理解している牟田さんの理解をチーム側もされているかと思いますが、復帰に向かうまで壁はなかったですか?
【牟田】そこはチームとの信頼関係を築けているので、自分のやりたい事を受け入れてくれる環境にも恵まれていて、壁はそこまで感じませんでした。
ですが、自分なりに考えてやる分、試合でしっかりとパフォーマンスを発揮しないと、発揮できなかった時の評価を受ける事も理解しているので、自分の発言、行動に対する責任はプレーで取らないといけないと常に思っています。
ーーそうなんですね。チームとの信頼関係がとても重要ですね。
【牟田】そうですね。ですが、これも人によるかなと思います。
日頃の練習態度だったり、見せている行いですよね。
そういう選手はチームとの信頼関係も薄く、日頃努力を怠っている選手がチームとは別の練習メニューを希望したとしても受け入れられないと思います。
“何言ってんだ!”ってなりますよね。(笑)
これはサッカーに限らずですが、日頃の積み重ねが大事だなと思いますね。
ーー本当にそう思います。牟田さんはチーム合流後、試合に復帰するまでどのくらいの期間がありましたか?
【牟田】1週間別でトレーニングして、その後1週間チームに合流してトレーニング、3週目に復帰しました。
ーー他の選手と比較して復帰時間に差はありますか?
【牟田】そうですね。他の選手は1週間半で復帰しています。
中にはチーム合流したその週末には試合に出ている選手もいて、凄いなと思っていましたね。
ですが、早めに戻っている選手を見てても、万全ではないなと感じました。
出たいより、メンバー構成で出ないといけない状況にあった選手もいますが、自分も出れるか?と言われた事がありましたが、その時は万全ではなかったので「出れません」とはっきり伝えましたね。
ーー今回皆さんにコロナ禍に対して感じている事を伺いましたが、その結果から感じる点はありましたか?
【牟田】今回コロナに感染したり、隔離を経験した事によって、それぞれが自分の体に向き合うチャンスだったと思います。
それによって、トレーニングに対して何か意識が変わったのかが更に気になりますね。
この状況を経て、何か自分自身変われているのか?ただコロナに感染して辛かっただけでは何の意味もないですからね。
環境の変化で感じる自分の変化
ーー牟田さん、冒頭に戻るようですが、やっぱり気になるので聞いていいですか?(笑)
お子さんが生まれてから日常はどう変化していますか?
【牟田】変化かぁ~。(笑)
そうですね。やっぱり、生活の中に一人の人間を育てるという新たな役割が増えたので、その点大きく変わりましたね。
そして何より“パワー”になりますよね。疲れた時の癒しにもなります。
ですが、子どもが生まれる前から今でも、奥さんにはパワーをもらっているので、常に奥さんや子供からパワーをもらっていて、どんな時も「二人の為に」という想いは常にあります。
すごく大きく変化している実感は今ないですが、この子が大きくなっていくにつれて、自分がかける言葉や行動でこの子の人生は大きく変わると思っています。
それは、自分の子どもだけではなくてサッカーを教えたり、大人になってからもそうですが、大人の言葉は子どもにとってすごく大事で、愛を持って接する事が改めて大事だなと思いましたね。
正解はなかなかないと思いますが、やはりその子に対しての「愛」があれば伝わるし、行動も決まってくると思うので、自己満足にはならない様にしたいと思っていますね。
相手がどう思うのかをしっかりと感じて行動を起こしていきたいと思いますね。
ーーお子さんに対しての愛情表現はどの様にしていますか?
【牟田】愛情表現は、めちゃめちゃ喋りかけるし、抱っこもすぐするし、しっかり気持ちを伝えるようにしていますね。
「伝える」という事はしっかりとやらないといけないと思っているので、そこは大事にしています。
ーーこれからどんどん話せたり、動ける様になるのが楽しみですね!
【牟田】そうですね!
この小さい体で、一生懸命生きているのを間近で見ていると、自分も「今」という時間を大切にしないといけないとすごく思いますし、同じ一日でも成長をすごく感じます。
自分たちも成長しているとは思いますが、大人になればなるほど、その日を後悔なく生きる事は難しくなると思いますが、子どもを見ていると、もっと今を大事に生きないとな.と思わせてくれますね。
ーー牟田さん、ありがとうございます!
今後、むってぃーパパの子育て日記も残していきましょう!
【牟田】はい!是非お願いします!
牟田さんのトレーナー視点そして、教育に対しのお考えも反映しながらの牟田さん流の子育て記録、楽しみですね。
今シーズンで、所属していたいわてグルージャ盛岡を離れる牟田さん。
3年間”一岩の中心”に居続け、チームをJ2昇格に押し上げた軌跡は、チームの歴史とファンの心に刻まれ続けるでしょう。
牟田雄祐選手、3年間本当にお疲れ様でした。
今後もアスリートとしてのご活躍、そしてパパとしての牟田さんの姿をCittaは追いかけていきます!
次回もお楽しみに!
PROFILE
いわてグルージャ盛岡キャプテン 牟田雄祐
サッカーJ2リーグ所属 いわてグルージャ盛岡キャプテン
今シーズンで退団を発表。
KSNサポートアスリート
小学生からサッカーを始め、大学卒業後2013年からJリーグ、名古屋グランパスに入団。2年間の経験後、京都サンガF.C.に入団し、所属中に期限付き移籍でFC今治でもシーズン通して活躍。2020年から現在所属のいわてグルージャ盛岡へ移籍。
昨シーズンはキャプテンとして、チームのJ2昇格に大きく貢献した。
選手活動に加え、Game Changer Pass-A-Ball Projectの活動もおこない、子どもたちの支援活動を精力的に行う。
⇒Game Changer Pass-A-Ball Project