『コラム』
- 有限会社ゴルフハウス湘南
- 2022/11/28
「ごきげんゴルフ」を実現する2つの脳とは?
ゴルフの上達は、スイング技術ばかりを追い求めても片手落ち。
心(メンタル)と体(フィジカル)、そして技(テクニカル)を「三位一体」で向上させる必要があります。
前回のコラムでは、心(メンタル)についてお話ししています。
⇒「こどもに戻れば、ゴルフはグンと上手くなるコラム」
ごきげんな心の状態を、応用スポーツ心理学で「フロー」といい、不機嫌な状態を「ノンフロー」といいます。
フローは物事のパフォーマンスが上がります。
ゴルフでも、普段の練習の成果が存分に発揮でき、ナイスプレーが期待できます。
一方ノンフローは、物事のパフォーマンスは著しく低下します。
ゴルフでもミスを連発し、思うようなプレーが難しくなります。
ゴルフに必要なメンタリティとは、正にノンフローをフローに転化する能力です。
このことを「ごきげんゴルフ」と呼ぶことにします。
今回は「ごきげんゴルフ」を実践するにあたり、メンタルを脳科学の観点から考えてみたいと思います。
心のアンテナ、3本立っていますか?
読者のほとんどの方がスマホをお持ちだと思います。
スマホは本体だけあっても役に立ちません。
アプリとネット回線が必要です。
どんなに高性能の機種を購入しても、必要なアプリをインストールしなければ動きませんし、アンテナが3本立った状態でなければメールも通話も、ネット検索もできません。
このことはゴルフでもまったく同じです。
ゴルフスイングに必要なフィジカル(柔軟性や筋力など)を向上させ、高い身体能力を身に付けることは、高性能のスマホの機種を購入することと同じです。
真っすぐ飛ばすだけでなく、ボールを左右に曲げたりスピン量をコントロールしたり、アプローチやパッティングなど、様々な技術を習得するのは、様々なアプリをインストールし、使えるようにすることと同じです。
そして、メンタリティを向上させることは、アンテナを3本立て、通信状態をよくすることと同じです。
どんなに高性能な機種を持っていても、便利なアプリをインストールしていても、アンテナが一本も立っていなかったり圏外だったりでは、その性能は著しく低下し、ほとんど機能しなくなってしまいます。
つまり、ゴルフに必要なフィジカルをどんなにトレーニングで鍛えても、練習でどんなにスイング技術を向上させても、メンタルが弱く、いつまでもノンフローを引きずっているようでは、鍛えた体も、練習で培った技術も、コースで発揮することはできません。
グリーンを狙う際、体力的にも技術的にもグリーンに乗せられる能力はあるのに、池越えや谷越えになったとたん心がノンフローに陥り、池や谷に落としてしまう結果になるのです。
一つ目の脳「認知脳」とは?
メンタルの重要性をご理解いただいたところで、メンタルへの理解を深めるため、少しだけ脳科学の話をしましょう。
メンタルは「思考」と「感情」に分けられます。
思考が脳の働きであることは理解できると思いますが、感情は心(胸)にあると思われがちです。
これは、緊張すると心臓がドキドキするからだと思います。
しかしこれは、緊張することによって交感神経の働きが盛んになり、心臓の鼓動が早くなることで起こる生理現象です。
思考も感情も、間違いなく“脳”の働きによるものです。
具体的には、思考は主に「大脳新皮質」というところが司り、感情は「大脳辺縁系」というところが司っています。
ですから、メンタル力を高めるためには、脳のことを知っておくと理解しやすくなります。
人間には2つの脳があると考えてください。
この2つとは、右脳と左脳とか大脳と小脳といった、脳の構造による分け方ではなく、その働きの違いによる2つです。
まず脳の一つ目の働きは、外界の状況や出来事を判断し、行動を明確にすることです。
この働きをする脳を「認知脳」といいます。
例えば、「雨が降っている」と認知すれば、外出の際、傘を持って行くという行動を取ります。
自分が今、美術館に居ると認知すれば、「静かにする」という行動を取ります。
ゴルフにおいても、同伴プレーヤーが打とうとしていると認知すれば、邪魔にならないよう静かに見守ろうといった行動が取れるのです。
認知脳は、人間が社会生活を営む上で必要な能力であり、動物の中で人間が一番発達しています。
この認知脳が、まだ十分発達していない子供は、美術館だろうが図書館だろうが、お構いなしに騒いでしまうのです。
自分の心に働きかける「第2の脳」
脳の2つ目の働きは、自分の心をコントロールする働きです。
この脳を「ライフスキル脳」といいます。
ライフスキル脳は、自分の心を「フロー化」します。
つまり、認知脳は外界に向けて働きかける脳、一方ライフスキル脳は己の内側に働きかける脳といえます。
ライフスキル脳は、文字通り、ライフ(=生きる)ためのスキル(=能力)なのですが、人類は認知脳が発達したばかりに、このライフスキル脳を低下させてしまいました。
故に人は、ことあるごとにイライラしたり、カリカリしたり、過去の失敗を考えて悔やんだり、未来のことを考えて不安にかられたり、時には恐れたりと、心をノンフローにしてしまうのです。
「ゴルフの日が雨だった」「OBを打ってしまった」「短いパーパットを外した」「皆の見ている前でチョロした」・・・など、ゴルフでは心をノンフローにする出来事は山ほどあります。
であるが故、練習の成果を存分に発揮するには、自分の心に働きかけるライフスキル脳を磨き、ノンフローに陥った心をフローに転化することが必要なのです。
ゴルフに限らず、仕事でも生活でも、あらゆる物事において、ライフスキル脳を磨き、自身の心をフロー化することで、己の能力を最大限に発揮することができるだけでなく、周囲の人々と良好な人間関係を築く上でも必要なことです。
これは、豊かな生活を送る上でとても大切なことではないでしょうか。
自分の心にフォーカスしよう
では、ライフスキル脳を磨き、心を豊かにするにはどうすれば良いのでしょうか。
まず大切なことが、自分の心の状態に「気づく」ことです。
スマホで通話ができないとき、圏外であることが分かっていれば、電波が届くところに移動する、フリーWiFiが使えるところを探すなど、適切な行動を取ることができます。
一方、圏外であることが分かっていないと、故障かと思ってしまい、スマホを振ったり叩いたりと、挙句の果てに修理に出してしまったりと、的外れなことをしてしまいます。
最近は、携帯電話の電波は至るところに張り巡らされ、圏外となるケースは少なくなりましたが、心の状態はそうはいきません。
ナイスショットがでれば「ごきげん」になるでしょうし、ミスショットすれば「不機嫌」になるでしょう。
カッと頭に血が昇る人もいるかも知れません。
どちらも人間の能力を低下させるノンフローの状態です。
心の状態は、最近の携帯電話のようにいつも安定しているわけでなく、非常に不安定で、フローとノンフローを行ったり来たり、常に揺れ動いているものです。
だからこそ、今自分の心がどうなっているのか、自分の心に問いかけ、自身の心の状態に気づくことが、ライフスキル脳を磨き、「ごきげんゴルフ」を実現する第一歩となります。
まずは自分の心にフォーカスし、自分の心の状態に「気づく」よう、努めてみてください。
次回もゴルフの上達に必要なお話しをさせていただきます。
お楽しみに。