『コラム』
- 有限会社ゴルフハウス湘南
- 2023/04/24
スコアメイクのコツは「急がば回れ」
「PUTT is MONNEY DRIVER is SHOW」
これはゴルフに昔からある格言です。
プロゴルフの世界では、ドライバーは観客を沸かせる見世物(ショー)にすぎないが、パットはスコアに直結し、獲得する賞金に大きく影響する、という意味です。
プロに限らずアマチュアでも、パッティング(パットすること)の向上はスコアメイクには欠かせない要素です。
またゴルフは頭のスポーツともいわれ、脳をとても使います。
中でもパッティングは脳をフルに使いますので、脳の活性化につながります。
今回のコラムは、前回に引き続きパッティング向上のポイントと脳活についてお話しします。
前回のコラムをご覧いただけていない方は、そちらも合わせてご覧ください。
⇒「パット数を減らし、スコアアップを図る意外な方法」(2023/4/12公開)
世界に2つとして同じグリーンはない
パッティングにおいても、ナイスプレーを生み出す5つのステップ(定石)は大切です。
前回、第1ステップ「情報収集」においては、誰よりも早くグリーンに到達し、情報収集に必要な“時間を作る”ことが大事であるとお伝えしました。
何故なら、スコアメイクの要となるパッティングでは、グリーンの傾斜や芝目、地面の固さなど、多くの情報をつぶさに収集し、グリーンの状態がどうなのかを把握することが不可欠で、そのための時間が必要だからです。
コースプレーの経験のない人は分からないかも知れませんが、グリーンの面はジュウタンのように綺麗に芝生が刈られ、一見平らに見えますが、実は起伏があるのです。
その起伏も一様ではなく、同じコースでもホールによってまったく異なり、世界中探しても2つとして同じ状態のグリーンはありません。
同じターゲットゲームのボウリングは、多少レーンによってクセはあるようですが、基本平らでどこも同じです。ビリヤードの台も同様、起伏はありません。
また自然の中で行うゴルフは、晴れて乾いているときと雨の日では、グリーンの状態は異なります。
その上芝生は植物ですので成長します。
朝のスタート時の芝生の状態と、夕刻の芝生とではボールの転がり具合が変わってきます。
それらを隈なく把握することがスコアメイクには不可欠なのです。
いち早くグリーンに到達していれば、ボールとカップまでの距離を歩測したり、他のプレーヤーが打ったボールの転がり具合などを見て参考にしたりする時間的余裕も生まれるというものです。
素早い行動を心がけましょう。
それに加えて大切なポイントがあります。
それは「急がば回れ」です。
いち早くグリーンに到達しなければと、自分のボールまでの最短距離を歩くのではなく、遠回りして自分のボールに向かうことを心がけましょう。
といっても言葉だけでは分かりづらいでしょうから、次に図で説明したいと思います。
「急がば回れ」で効率よく情報収集
ここからは図を見ながらお読みください。
図において、Aがグリーン上の自分のボールです。
プレーヤーは図の下の方からグリーンに向かって移動します。
その移動の方向を黒い矢印で示しています。
そしてグリーンに到着したら、グリーン上の自分のボールAに行き、マークをします。
その時、青い矢印のルートが、ボールAに向かう最短ルートです。
プレイファースト(迅速なプレー)の観点では、この青ルートで向かうと時間短縮になり、良いとされます。
しかし、情報収集の観点では、赤い矢印のルートでボールAに向かうと効率的です。
なぜ遠回りの赤ルートの方が効率的なのでしょうか?
それは、移動しながらグリーンの状況を四方八方から観察できるからです。
移動と情報収集とを同時に行えるから効率的なのです。
グリーンの傾斜は、ボールAからピンの方向、つまり①の方向から見たワンウェイでは、正確な傾斜を読み取ることは難しいです。
やはり②’や②”といった横位置からや、③のピンの後ろ側から観察することで、左右の曲がり具合に加えて、上りや下りなどの情報も隈なく把握することができます。
最短の青ルートで移動すると、確かにボールには早く到達できますが、そこから観察のために②”(もしくは②’)、そして③に移動しなければなりません。
そのような時間が取れない場合は観察を諦め、①方向からの情報のみでライン(グリーン上をボールが転がる軌跡)を予測しなければなりません。
これでは、ラインを正しくイメージできない状態でのパッティングを余儀なくされ、偶然でも期待しなければ、カップインはおろか、カップに寄せることも難しくなってしまいます。
一方、赤ルートで移動すると、ボールに到着する時間は多少遅くはなりますが、ボール到着までに、②’→③→②”といった順で、移動しながら観察することができるため、ボール到着時には、もうすでに十分な情報収集を終えていることになります。
故に、即パッティング動作に入ることができるため、トータルの所要時間は、この方が遥かに短縮され、プレイファーストにつながります。
正に「急がば回れ」なのです。
「ながら行動」で脳を活性化
このグリーン周りの「急がば回れ」は、歩いて移動しながらグリーンの状態を観察することで情報収集してラインを予測、イメージする「ながら行動」です。
ゴルフでは、この「ながら行動」が随所に見られます。
次のショットの地点まで歩きながら、残りの距離を計算し、使用するクラブを考えたり、同伴プレーヤーのショットを静かに見守りながら、自分のコース戦略を考えたりです。
ホールアウト後、次のホールに向かいながらスコアを数えたりすることもあります。
このような「ながら行動」は、デュアルタスク運動(二重課題運動)といい、認知症予防に効果的といわれています。
ゴルフは、コース状況を把握し、戦略を練り、リスクヘッジしながら頭を使ってプレーを進め、「歩く」「クラブを振る」「ボールを打つ」といった運動をします。
そして残りの距離を算出したり、またスコアを数えたりといった計算も行います。
正にゴルフは、自然の中で楽しみながら行う、脳の活性化、いわゆる「脳活」といえるのです。
デュアルタスク運動や、ゴルフの脳活効果については、以前公開した次のCittaコラムをお読みください。
⇒「ゴルフの健康効果③~認知症予防に効果的な“脳活ゴルフ”の仕方~」(2022/9/12公開)
ゴルフによる脳活で健康寿命の延伸を
認知症予防のための脳活のポイントは、次の3つだといわれています。
- 運動
- コミュニケーション
- 知的好奇心
脳は多くの酸素を必要としますが、運動によって酸素の供給量が増え、脳を活性化することができます。
そして、脳の中枢で記憶を司る「海馬」という部位には、神経細胞を新生させる機能があるといわれています。
その海馬の働きは、有酸素運動を30分程度続けると高まるそうです。
有酸素運動の代表格は歩くことです。
ゴルフは沢山歩きますので、楽しみながら有酸素運動を行い、脳の活性化につながるというわけです。
また、コミュニケーションは人間ならではの高度な脳の活動です。
相手の表情や口調、身振り手振りから相手の気落ちを察したり、逆に自分のいいたいことを言葉にして発したりする行為は、脳をフルに使っています。
ゴルフは沢山歩くうえに、同伴プレーヤーとの会話機会も多いので、よりコミュニケーションを楽しむことができます。
脳活にはうってつけのスポーツといえるでしょう。
最後の知的好奇心は、「知りたい」「学びたい」「出来ないことを出来るようになりたい」という成長欲とイコールだと私は思います。
「上達したい」「もっと飛ばしたい」「良いスコアで回りたい」というゴルフの基本的な欲求は、これそのものでしょう。
2019年の「国民生活基礎調査」で、要介護になった原因の第一位が「認知症」であると発表されました。
二位が「脳卒中」、三位が「高齢による衰弱」、そして「転倒事故による骨折」と続きます。
最近の脳科学の研究では、脳の神経細胞は年齢に関係なく、鍛えれば鍛えるほど増えることが判ってきています。
ゴルフで楽しみながら「脳活」することで認知症を予防し、要介護になるリスクを軽減、健康寿命を延伸し、高齢ゴルファーが長くゴルフを楽しんでいただけたら嬉しく思います。
次回もお楽しみに。